第2部【パネルディスカッション】
「読者・街・書店」
パネルディスカッション「読者・街・書店」で語られたテーマは、次の2点だった。
1.書店の現状と問題点
2.書店におけるリアル(地域読者とのつながり)とIT(オンライン販売・SA化)の関係
広島県内を中心に現在31店舗を展開し、今年4月には2000坪のアミューズメント複合書店をオープンした「フタバ図書」、いまやナショナルチェーンとして認知度の高い「ジュンク堂書店」、神田神保町に建築書専門の店を構え、オンライン販売にも力を入れる「南洋堂書店」、小規模ながら地域密着型書店として定評のある東京・国分寺市の「ブックス隆文堂」。それぞれの書店カラーがまったく異なるだけに、4者4様の見解が披露された。
1.で、とくに「自社または書店業界の問題」について各氏が挙げたのは次のようなものだった。
世良氏「イニシャルオーダー(発売前に商品の事前注文をする)を行うシステムが実質上、業界にない/出版社とのパートナーシップの欠如=在庫の過多・欠損が多く、適正な在庫回転率が実現しない/コンビニの台頭による雑誌売上げの低迷/など」
荒田氏「建設・建築業界の慢性的不況/他の街の書店大型化による神田神保町からの客離れ」
福嶋氏「天候が売上げに大きく影響する/情報発信地としての立場の危うさ=読者のもつ情報・要望に書店がついて行けなくなってきた/流通問題−業界のインフラの未整備」
所用のため途中からの参加となった高橋氏は「書店業界に入った当時、分からなかったのは『売りたい本』が入ってこないこと。欲しがっているお客様がいながら、入荷できない。隣町の大型書店には山のように積まれているのに。そこで、出版社に飛び込み営業をして回った。零細書店はここまでしなければ商品を入手できない」と、平等な配本が行われていない現状を訴えた。
「新刊については神田村の取次から直接現金で購入することが多い」という南洋堂の荒田氏をのぞく各氏が共通して挙げたのは、やはり流通上の問題だった。これは同時に、「流通の要である」取次の問題を指摘することにもなった。また、世良氏は「業界では(出版社・取次・書店の)三位一体という表現をよく使うが、それより自社の生き残りに必死というのが現状。誰もが『対読者』を考えているだろうが、そのベクトルは書店と出版社とでは異なる」と語った。
休憩後、「オンライン書店ができたからこそ『リアル書店』という呼称が出てきた」(司会の永江氏)現在、両者の関係をどう捉え、活かしていくかについて、各氏が意見を述べた。
まず、平成9年からオンライン販売に着手し、「前月比でダウンしたことがない」という順調な伸びを続ける南洋堂の荒田氏が、オンライン販売のノウハウについて「チェーン展開しなくとも広く読者を獲得できるのが利点だが、『立地条件』はある。共通する読者がいるホームページにリンクをはるなど、『交通の便』は良くしておく必要がある」と話した。
一方のリアル書店は今後、地域読者との直接的な関係作りがこれまで以上に必要。「『広島県最大規模』を地元読者にアピールし、ハード(品揃え)とソフト(接客)の両面を強化する」と世良氏。福嶋氏は「ナショナルチェーンと地元の書店を読者は使い分けている。『棚に1冊だが、アイテムは多い』というウチのような書店は、専門的な本を求める方には便利」と話した。高橋氏は「お互いの家族構成まで分かっている近隣客が多い。『今度就職したお孫さんにこんな本はどう?』というかたちで踏み込んで声をかけている」と話した。
また、リアル書店の役割について福嶋氏は「当社が広めた『座り読み』にも罪があるかもしれないが、情報を買うことに対する価値が落ちている現実がある。インターネットは予定調和的な買い物が主流。リアル書店は、来店客に対して偶然の本との『出会い』を演出しなければ」と述べた。
最後の質問コーナーでは、「ブックオフ」「再販制度の是非」「電子ブックの普及による紙媒体の将来」についての見解がパネリストに求められた。
フタバ図書は「GIGA」で新刊と古書の併売を開始したことから、業界の一部からは批判的な声も寄せられている。世良氏はこれについて「ブックオフ対策という側面がある」と話し、「彼らは出版文化の繁栄などとはまったく関係のない次元で本を扱っている」と批判した。また、紙媒体の将来について福嶋氏は「電子ブックの普及が進むことは確かだが、個人的には、読んで汚れもしないものはイヤです」と、紙への愛着を示した。
来年春、存廃について一応の決着がつく再販制度についての4氏見解は次の通り。
世良氏「米国式の非再販制度を輸入しては駄目だ。しかし、現状から変わらざるを得ない部分もある」
荒田氏「以前から新刊も古書も販売してきたウチには、再販の存廃は関係ない」
福嶋氏「再販は必要。出版社は他社の動向を見ながら、定価設定の段階で価格競争に必死。そこを見もしないお上(公取委)にとやかく言われたくないという気持ちだ。ただ、再販は企業同士の契約でしかないということも、前提として認識しておく必要はある」
高橋氏「再販は必要。零細書店にとっては死活問題」
(新文化通信社 石橋毅史)