年1回、神保町に集まろう地方出版
「出版状況の厳しい今だからこそ、各地の出版人たちの声を聞きたい」−−こんな呼びかけに、北は札幌、岩手、南は沖縄から、約35社から参加者が集まり、分科会「年1回、神保町に集まろう地方出版」が開かれた。司会は、同分科会の呼びかけ人でもある秋田・無明舎出版の安倍甲氏。パネリストとして、沖縄・ボーダーインクの宮城正勝氏、福岡・石風社の福元満治氏、千葉・崙書房の小林規一氏、クロスメディア(ロンドン)の丸茂和博氏、地方・小出版流通センター・門野邦彦氏、そして岡山・吉備人出版の山川隆之が加わり、進行した。
<パネリストの自己紹介>
まず司会の安倍氏が、地方の版元から、こういう交流の機会がほしいという要望が強かったなかで、この分科会が実現した。自由に話し合う中で、地方での出版が直面している問題点を一緒に考えていこうと提案。続いて各社の自己紹介が行われた。
山川 創業6年目で社員は6名。編集プロダクションからスタートし、年間刊行点数は今年約30点。ここ数年で急速に増えている。
丸茂 20年前にロンドンへ。それまでは日本でミニコミを発行。12年前から、ロンドン駐在の日本人を対象にしたガイドなどを発行。近年では、英国人向けに日本の食文化を紹介する本を手がけている。スタッフは8名。
小林 崙書房に入って23年。地域をテーマにしたふるさと文庫が176点を数える。首都圏に近い地方出版社としての在り方を考えながら、地域にこだわった本を出し続けている。
宮城 1990年に発足。3人でスタートし、現在のスタッフは6人。年間売上の60〜70%は自社出版物、30〜40%が編集の請負い。活発な沖縄の出版状況の中で、年間15〜20点を出している。
福元 20年前に一人で始めて、現在は3人。編集・制作・営業すべてを3人でやっている。福岡にあるが、いわゆる郷土本はほとんどない。アジアのパキスタン、アフガニスタンの本が多いのも特色。販売は地方・小出版流通センターをメインに日販は注文口座のみ。いい本なのに売れないことも多く、直接読者とどう結びつくかが課題。
門野 創業26年。例年、前年比プラス5〜6%で伸びてきたが、今年の達成は難しそう。社員10人、アルバイト12人の体制。単行本に限っていえば、95年は2500点だった扱い点数が、99年は1600点。今年(2000年)はもっと減りそう。
<私の編集流儀>
自己紹介の後、司会の安倍氏から、全国のパネリストについて説明があり、それを受けて各社の編集流儀について報告が行われた。その中で特徴的なことを挙げると−−石風社の福元氏は、マスコミに対する営業を報告、同社では書評子や知識人に手紙をつけて、書評依頼文を送り、かなりの率での掲載率を上げている。広告量の少ない地方の版元にとって、書評の重要さを説いた。ボーダーインクの宮城氏は、90年に同社を立ち上げるにあたり、他のスタッフに「先生」と呼ばれる人たちとのつき合いはやめようと約束。新しい「書き手」をみつけることに力点をおいた。「新しい書き手はバケル」という言葉に勇気づけられる参加者も多かったようだ。こうした報告を受け、地方・小出版流通センターの門野氏は、この5年間における地方出版の変化を示し、客単位の低下と定価設定の大切さを指摘しながら、東京の大型書店で地方出版物の棚がどういう形で、どんな規模で残るかが問われる大切な時期であるという問題提起をした。このあと、参加者からの質問に答える形で、沖縄や福岡での出版社・書店の状況や印刷会社に対する位置づけについての報告があった。安倍氏からは特に、東京の印刷会社の技術革新によるローコスト化操業が知られるようになり、小部数での出版を余儀なくされる地方にとっては、大いに関心を集めていた。
分科会後、懇親会が開かれ、各地方出版社同士、交流を深めることができた。こうした地方の出版社が一同に会し、その悩みや問題点を語り合う機会はこの数年少なく、来年も元気に顔を合わせようという思いを強くした分科会だった。
(吉備人出版 山川隆之)