北方謙三 【北方塾】 本の学校
●吉川英治文学賞 受賞
著書 「楊家将」 で、この度 北方謙三さんが 吉川英治文学賞を受賞されました。
おめでとうございます。
   
●2003年2月に、トークイベントで鳥取・松江にお越しいただいた北方謙三さん。
イベントの際、ご来場のお客様よりいただいた北方さんへの質問は、講演中に紹介した方以外にも たくさんのお客様からいただきました。
この度、北方さんのご好意で 当日紹介できなかった質問にも ご回答いただけることになりました。
是非、みなさんの「読書ライフ」のご参考にしてください。

2004.6.22 更新

Q:第3回梁山泊の会に参加させて頂きました。
「ハードボイルド、ハードボイルド」っちゅう先生は女の私の目には、ひたむきで可愛らしくさえ映りました。
子供を育てる前は、そうした男臭さに騙されたもんですが、現在は逆、逆ですね。
男を誇示すればするほど、可愛くなってつい世話など焼きたくなります。
女は出産前後で別もんになることがあるようです。
熱く語る先生を、ぎゅうっと抱き締めて「もうええから、わかったから、な、わかったから」と頭をなでなでしたかった!すごく!ほんっとにすてきです。もう、メロメロです。

さて、質問です。
女性が主人公の小説は書いていらっしゃるのでしょうか?そして今後女性中心の小説の執筆のご予定は?
女性はハードボイルドにはなりえないの?

A:
梁山泊の会に来てくれてありがとう。読者と語り合える場所って、あそこぐらいだからね。俺にとっては、愉しい時間なのだ。
ところで、女性主人公のハードボイルドも書いているんだよ。
『ふるえる爪』『雨は心だけ濡らす』『風の中の女』、これみんな女性主人公。
だけど、普通の女性が主人公だと、やはり難しいね。
男ならすっとわかる心理を、いちいち考え込んでしまう。
また書こうという気持ちは、いまは持っていない。
Q:作家をやっていて「よかったな〜」と思う時はどんな時ですか?

A:
自分の生きてきた軌跡が、本という形のあるもので見えること。
Q:作家になっていなかったらどんな職業についていたと思いますか?

A:
想像がつかないが、静かに普通の人生を送りながら、それでも売れない原稿を書い
ていたという気がする。

2004.5.25 更新

Q:先日モロッコに一人旅に行ってきました。
モロッコで何人か日本人と出会い、何日か共に行動しました。
そこで一つ話題になった事が人間には「喜怒哀楽」以外の感情があるか、という事です。
モロッコから帰ってきて数週間経ちますが、未だ答えを見つけられず、すっきりしません。
モロッコに旅に出たのも先生の旅行記に影響を受けたものですから、先生に回答頂けると嬉しいです。


A:
喜怒哀楽の捉え方によって、考えは変わるだろう。
生きる喜びを、喜に入れるのかどうか。
そんなことでも答えは変わるのだと思う。
あまり考え込むことに意味はない、と俺は思う。
モロッコだが、俺はエッサウイラという街が好きだ。
夕陽の美しさでは、世界有数だと思うよ。
それからタジンが好きだ。
 

2004.5.18 更新

Q:
貴著書を100冊以上を購読しております。最新の購読は楊家将。
ついて質問させて頂きます。
現在水滸伝を執筆されて居られますが発刊期間を早めることは出来ないものでしょうか。
多々ご事情がおありと存じますが、他の出版を控えて専念と言うのは無理なお願いでしょうか。
又、最近歴史物が多くなっておりますが、本来のハードボイルドの発刊を家人と共に心待ち致しております。
大変ご多用中と存じますがご検討頂ければ幸甚に存じます。
小生は作家何方でもサイン会等は不要であると考えております。
むしろその時間の遷移を北方マインド的な自伝などを執筆されたら如何と存じますが。
突然ぶしつけで手前勝手なことを申し上げましたことお許し下さい。


A:
水滸伝は、今年から年四冊のペースになる。
これは自分の限界に近いといっていいだろう。
日本を舞台の歴史物も、新聞連載中。
ハードボイルドは、ブラディドールシリーズの続編を刊行中。
全開である。
また、サイン会は、日ごろ直接出会うことのない読者の方と、話などができる数少ない機会だと捉えていて、年に一度ぐらいはやりたいと思っている。
Q:
このHPの回答で、先生が釣りがお好きなのを知りました。
連載中の水滸伝で?魚を釣る話しが出てきますが、もしかして3mのカジキを釣ったときの体験が生かされているのかなとも思いました。
水滸伝では兎や鹿の狩りの話しも出てきて、そこに書かれている動物の習性とか、狩りのやり方、料理の仕方とかも非常に説得力があるなと思います。
狩りもなさるのですか?それとも本で仕入れた知識なのでしょうか?
まさか横井さんや小野田さんのような体験をお持ちだとは思いませんが・・・。


A:
釣りは小さなものから大きなものまで、大抵やります。
釣ったものは自分で捌き、自分で食います。
狩は、アラスカで少し経験したことがあります。
料理は、ほとんど自己流ですね。
動物を捌くこともありますよ。
最低の原則は、食わない限り殺さないこと。

2004.5.1 更新

Q:
これがないと生きて行けない!」というものがありますか?


A:
生きながらの死は、精神において存在するが、肉体においては存在しないと思う。
精神の死は、創造力の枯渇である。
だから、苦しくてもたえず新しいことに挑戦しようという意思だけは失わないようにしている。

2004.3.30 更新

Q:
初めまして。
私は自分のルールを守る事がハードボイルドであり、男の性を証明するものだと先生の小説で拝読しました。
先生は、女を口説く際にでも自分のルールを優先しますか?
私は自分のルールを守る事によって、女を傷つけてしまったり、嫌われてしまう事が今までの人生で多々ありました。
自分のルールを守るという事は考えようによっては、非常に主観的な物の考え方であり、世の中に受け入れられない事もあると思います。
自分のルールと相手のルールに折り合いを付けていかなくてはならない場合、先生ならばどう対処されますか?


A:
他人の人生に及ぶルールは、本当のルールとは言えない。
他人に及ばないことを、まずルールの基本にすべきではないか、と俺は思う。
ならば他人に及びそうな時は、密かに泣けばいい。
主観とルールは違う。
主観はしばしば変わることがあるが、ルールは不変の、つまりは生き方のようなものと言っていいだろう。
だからルールは他人との折り合いは付けられない。
泣きながら自分で耐える。これしかないな。
世の中に受け入れられなければ、なんらかの方法で世間と闘う。
たとえば、小説を書くというようなことでもいいし、政治性を帯びた声を上げてみるのもいい。
自分の人生観、社会観、人間観に基づいたルールを確立しているかどうかが、まず問題なのだが。

2004.3.17 更新

Q:
小説家を含め芸術家は、自分の醜い部分や弱さ、また日常の何気ない面を美化し、自分の人生を装飾できるという点を以前から私は感じています。
私は先生の小説の中で「錆びた浮漂」が一番好きなのですが、この小説は日常を淡々と送る主人公の内面に、譲れない「こだわり」が垣間見えると思っています。
私は小説家でも芸術家でもありませんが、生活の中に何らかの美意識を持っていきたいと思うのです。
しかしそれを世間の中で貫くのは、かなり困難であるとも思っています。
先生はこの点についてどう思われますか?


A:
自分の美意識を、世間の中で貫くのは、言われる通り難しい。
実人生で実現できないことを、作中人物にやらせているところは、多分にあると思う。
小説家の特権だな、これは。
生活の中では、最低限のことは守るべきというルールを自分に課している。
約束を破らない、卑怯なことをしない。この程度だよ。

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