北方謙三 【北方塾】 本の学校
●吉川英治文学賞 受賞
著書 「楊家将」 で、この度 北方謙三さんが 吉川英治文学賞を受賞されました。
おめでとうございます。
   
●2003年2月に、トークイベントで鳥取・松江にお越しいただいた北方謙三さん。
イベントの際、ご来場のお客様よりいただいた北方さんへの質問は、講演中に紹介した方以外にも たくさんのお客様からいただきました。
この度、北方さんのご好意で 当日紹介できなかった質問にも ご回答いただけることになりました。
是非、みなさんの「読書ライフ」のご参考にしてください。
   

2004.3.11 更新

Q:
北方先生は、コメディを書いてみようと思われたことは、おありですか?


A:
ユーモアの感性が欠けている。
自分ではそう思っているが、笑ったといわれたことがないではない。
しかし、コメディは無理だろうな。発想になかった。
Q:
個々の作品の題名を考えるのは、書く前、書いた後、どちらでしょうか?
また題名には、時間をおかけになるほうですか?


A:
時と場合による。
雑誌、新聞連載だと、先に決めざるを得ない。
書き下ろしだと最後の最後まで引っ張ることもある。
時間をかけるほうだと思うが、実は瞬時にひらめいた方がいいタイトルになっているという気がする。
ともあれ作品の顔の部分だから、脳ミソをぎゅっと搾っていることは確か。

2004.2.20 更新

Q:
私は高校3年生の男です。
先生の水滸伝を中学三年生の夏に読んで以来、続編を読み続けています。
偏屈で気の弱い私でも、水滸伝を読んでからは物の見方、考え方ががらりと変わりました。
特に人の真意を感じ取ろうとする目、物事の本質を見抜こうとする目を養うことができたことは、とても大きな喜びです。
そして、異性に対する想いまで変わりました。
このことによってさらに視野が広がり、自分の感性を高められ、色々なことをありがたく思えるようになったのです。
 私事で申し訳ないのですが、私の今の悩みを書かせてください。そして、何かお言葉をいただければと思います。
 中学校3年生の5月、同級生の、ある女の子を好きになりました。
そこで、好きだという気持ちを私が目で訴えたことがあったので、そのためかもしれませんが、彼女は私への好意を挙止動作などで伝えてくれました。
ですが、自分に自信のない私は彼女に話しかけることさえできませんでした。
そんな中で、水滸伝を読んだ私は、将来への志を徐々に得ていきます。
この時に林沖と張藍の愛に憧れながらも、高校受験(彼女も偶然同じ高校を受け、私は合格、彼女は落ちて別の高校に行きました)の直前に、彼女が見ている傍で「高校に入ったら変わり者を見つけて、その人と付き合おうかな」と、友達相手に言った覚えがありますし、卒業文集には「志を生きがいとして一番大切にし、志のために自分の好きなことも断って勉強していく」という感じのことを書きました。
これは、偏屈な私の変な思い込みによる間違いでしたが、受験への不安、何よりも彼女にアタックすることへの逃げでありました。
高校に入った私は、1年目は何事にも全力で取り組み、それなりの成績も出していました。
しかし、科学系の部活の部長として活動する中で、社会と人と実際問題への取り組みの関係を学んだり、他人とは違った方法で勉強して発想力を鍛えよう、と教科科目を勉強することで、学問的な思考が(たいしたことがないレベルですが)出来上がっていきます。
そうしているうちに、高校の系統性の少ない勉強と、問題処理的なテストに嫌気がさしてきます。
また、高校生まで責任逃ればかりしてきた私にとって、部長としての仕事は重荷になっていました。
部活のことだけに精一杯になり、勉強がおろそかになっていたのですが、2年生のときの部活の成果はボロボロで、その上成績ががた落ちしたので落ち込みました。
人員、能力、資金不足なのに、先輩が残した課題は私にとって多すぎたので、何をすればいいのか分からなくなります。
ここで私は堕落します。それまでにも多かった、何もしないで考え事をする時間が余計に増し、更にはやめていたTVゲームもすることがありました。
自分の人間性を高める面で、本を読んだり、人と話したり、物を鑑賞したりすることは大切ですが、これは単なる堕落です。
そんな中で、いつでも彼女のことが気になりました。
特に2年生のときはこの気持ちが強くなりすぎました。
常に自責の思い、彼女は本当に私に対する好意を持っていたのかという不安、自分の将来への焦りがありました。
このことによって、更に勉強への身が入らなくなります。
やがて3年生になり、部活はやっと自分なりに、納得できる成果を一方面で出し、後輩へ部長の仕事を引き継ぎました。
ですが、受験勉強さえすればいいのに、今までと同じように机には長い時間向かっていても、気がそれていたり、勉強内容の細かい理解にこだわったり、問題集をやるにも一つの問題に時間をかけすぎて、テストにおける点数を受験までの間に上げるには演習量不足で絶望的です。
この3年間の勉強のために割いた時間は、むしろ多すぎたと思います。
机の前で考え事をしたり、勉強のくだらないことに拘っていなければ、よい成績が残せていたでしょう。
私ぐらい要領が悪くても、ちゃんと成功し、私よりもはるかに学問的理解をできている人がいるのに、と思うと情けないです。
また、次に会ったときの、彼女に合わせる面目がありません。
もう、自分を情けなく思うだけなのはイヤです。
自分の志を見限ることは馬鹿らしいです。
私は本当に弱い人間で、こうして人の同情を買おうとすることがあります。
ですが、これからまた頑張る糧を北方先生にもいただきたいです。
こだわりを持って勉強してきたからこそ、いつかはブレイクスルーが来るのではないかと思います。
 大変長い文章になってしまい、申し訳ありません

A:

甘えるな。
長文の手紙を書くエネルギーがあったら、別のことに使え。
だらしなさを、人に治してもらえるとは思うな。
いまのお前なら、彼女もそっぽを向く。
その程度の男だということを、噛みしめるところからはじめろ。

2004.2.10 更新

Q:
初めまして。
私は現在大学4回生で総合商社に就職も決まっているのですが、残りの学生生活で居酒屋でアルバイトをする事にしました。
日常生活において支障が出る程ひどくはないのですが、私はドモリなので、今まで接客の仕事をする事をなるべく避けて力仕事などにばかり手を出してきたのです。
改まった場や緊張すると上手く話すことができません。
商社業界の仕事は接待などをする事もあるでしょうし、将来の事を考えると、このままではヤバイと感じます。
そこで思い切って居酒屋でアルバイトする事にしたのですが、ドモリながら接客する事は予想以上に辛い事でした。
先生はドモリについてどのようにお考えですか?またドモリは治すことは可能だと思いますか?


A:
悩みは深い、と自分で思っているだけだ。
俺には関係ない。
ま、自分で直そうと努力しているだけ、立派なもんさ。
ドモリについてはなにも言えないが、ある話を教えよう。
開高健氏が、ドモリの担当者について言ったことだ。
意識は稲妻、舌は蝸牛。
その編集者は、一流でいまも活躍中だ。
自分で自分を磨け。

2004.1.16 更新

Q:
三国志、水滸伝と今までの寓話をハードボイルドに仕上げられていることに非常に感動しました。
時には恥ずかしい話ですが涙して読みました。
決っして大げさでなく質良いハードボイルドに仕上がっていると思います。
ところで私の一番好きな先生の本は「神尾シリーズ」ですが、あのシリーズは海嶺をもって最終なのでしょうか?
確かにマリオを二人の子供にしたことである意味過去が精算され新しい生活が始まるのですから。
でもこのシリーズファンとしては新しい暮らしの中での神尾の話も読みたい気もしますが!!


A:
小説に真実の完結はない。
この質問に対しては、これで勘弁してくれ。

2004.1.5 更新

Q:
先生の本棚には、ご自身以外の本はどのようなものが並んでいますか?
作家さんの本棚にすごく興味があります。

A:
書斎には、小説の類はないね。資料ばかり。それも山積み。
必要なものがどこにあるかは、嗅覚のようなものでわかるんだよ。自分でも不思議だけど。
蔵書は書庫で、それも整理されているとはいえない。
あらゆるジャンルがあり、そのジャンル別につっこんであるぐらいかな。
蔵書を見て、喜びを感じたりするタイプでもないな。
ただ、本を探しに行って、懐かしい本を見つけ、読み耽ったりすることはあるね。
最近では、ジャン・ラルテルギーの「名誉と栄光のためでなく」というのを見つけた。
学生のころに買ったもので、今では古書店でも見つからないのではないかな。
ま、そんな具合で、俺の体重と同じように、書庫は年々膨張を続けているのだ。
Q:
初めまして。最近になって私は健康のために禁煙をスタートしました。
先生は青年時代に肺を悪くしたと伺っていますが、現在でも喫煙をしていて健康に気を付ける事はありますか?
また今まで禁煙を考えた事はありますか?

A:
肺を悪くしている時も、煙草は吸っていた。
禁煙を考えたことはない。
食べるものとかで、健康を考えることはあるが。
現在では、葉巻を日に三本吸っている。
自分の人生に付属している毒だと考えているよ。

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