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『オリエンタリズム』 作家
高橋 亮

 歴史をどう見るかについて、教科書問題をふくめて論議がまきおこっているが、このことを根本的に正しくとらえるには、どのように考えを重ねてゆけばいいのか、その思考方法に(本書ではデシプリン<学問訓練>としてもとめられ、読み進んで行くうちに意味が明らかになるしあわせがある)答えてくれるのが、この一冊である。うれしいことに解説がまた丁寧である。
『我々は異文化をいかにして表象できるのか。異文化とは何なのか。ひとつのはっきりした文化(人種、宗教、文明)という概念は有益なものであるのかどうか。あるいはそれはつねに(自己の文化を論ずるさいには)自己賛美か、(「異」文化を論ずるさいには)敵意と攻撃にまきこまれるものではないだろうか。文化的・宗教的・人種的差異は、社会=経済的・政治=歴史的カテゴリーより重要なものといえるのだろうか。観念とはいかにして権威、「正常性」、あるいは「自明の」真理という地位を獲得するものなのだろうか。知識人の役割とは何であるのか。』
 これらが至るところで繰り返し提起され、読者に投げかけられる。ひとえに優れた著作の持つ普遍の世界に誘い出され、思考を深める習慣へと高められる。読書によって魂が洗い清められ、新たな世界へ誘われることほどの仕合せが、いったい他のどこにあろうか。緻密な前提がおかれ、前提そのものの検証から始まる論述に、いささかへきえきするのは、こちらにいいかげんな文章や評論しか読んでこなかった習慣から生じているものだ、とそれは反省に変る。そして身につけている観念とか無意識な物差しが、実はある意図にからめとられた歪んだものではないかと、自己の検証へと向かわせる本である。