じっとしているのが苦手で、外で遊んでばかりいた子供のころ。そんなわたしが、この本だけは百回ちかく読んだ。が、いつのまにか記憶があいまいになり、いま読み返したくても手もとに本がない。
おさない兄妹(二人だったか、三人だったか)がワンドゥードルという動物に会いにいく。かつてわたしたちと共存していたその動物は、人間が「信じることをやめた」せいで、自分だけの世界に引きこもってしまったのだ。「その存在を信じること」だけが、ワンドゥードルの世界へたどり着く唯一の方法だという……。
作者は『サウンド・オブ・ミュージック』のジュリー・アンドリュース。本のなかに彼女の写真とプロフィールが出ていた。本を愛するのと同時に、こんなにすばらしい話を書いた作者に、いつか会ってみたいと写真を眺めながら夢みたものだった。
五年ほどまえ、忘れかけていたその夢がかなった。ニューヨークで彼女のミュージカルを観たのだ。ほんの数段階段を下りたところに、十歳のわたしが思いつめるほどにあこがれたジュリー・アンドリュース本人がいる。六十をすぎてもなお、見事なその歌声に、涙さえ浮かんだ。
願う先にこそ結果が生まれる。まさに、ワンドゥードルの物語のように。そんな考えをも、大人になったわたしは忘れていたようだ。
本を手に入れることはできないかと、インターネットで版元にアクセスしてみたが、ダメだった。代わりに、『復刊リクエスト』というホームページを見つけた。題名を入力してみると、復刊交渉中とのこと。ぜひ、実現してほしいものである。そしてもうひとつ。かつてわたしのものだった本が、いまもこの世に存在していてくれれば、と思う。むかし好きだった人に貸したその本が、どこかで(たとえ古本屋の店先ででも)誰かの手で開かれるのを待っている、と信じていたい。
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