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カラフト犬物語―生きていたタロとジロー』 編集者
中島奈津江
 
 たった一度だけ、父とふたりきりで映画館に行ったことがある。当時話題だった『南極物語』。小学6年生だった。前後して、伯母から1冊の本をいただいた。それが『カラフト犬物語―生きていたタロとジロ―』だった。6年生にはちょっと対象年齢が低すぎる絵本だったが、父と見た映画の感動がよみがえり、読書ノート2ページほどの感想文を書き上げ先生に提出した。
 返ってきた読書ノートには意外なことが書いてあった。
「映画を見た感想をもっと加えてもう一度書き直してみよう」
 絵本で、しかもたった2ページの感想文。「これでいいか」と提出したはずのいつもの宿題が、なんだかちょっと大変なことになってしまった。
 書き直しの作業は何度か続いた。「このことについても考えてみよう」「ここで何を感じたのかよく思い出してみて」。提出するたびに新たな課題を与えられ、始めは書き直してもやっぱり2ページだった感想文が少しずつ増えていった。きびしくて、やさしくて、あたたかくて、大好きだった先生。先生との二人三脚は、子供ながら楽しく充実した作業だった。
 最終的に、市のコンクールに出す読書感想文を書き上げた。結果がどうだったかは覚えていない。ついでに読書感想画も出品したが、こちらは金銀銅いずれかの賞を頂いたのを覚えている。タロとジロがオーロラをバックに凛々しく立っている姿を描いたもので、感想文を書き上げる工程で、はっきりと頭に浮かんだ光景だった。
 今思い出してみても、始めに提出した感想文のできがよかったからだとは思えない。そこそこ勉強はできるのに欲がなくて、何でも「そつなくこなす」ことに満足していた私に、先生がチャンスを与えてくださったのかもしれない。いや喝を入れてくださったのかもしれない。そう思うと、「もっともっと頑張れたんじゃないか」と悔いも残る。
 大好きで尊敬していた先生との、そしてちょっぴり照れくさい父との、思い出の本と映画である。