<メディア・リテラシーの一例として>
「出版社の枠越え人気作家が自腹でフェアー」朝日新聞02-10/3にこうあった。7段で3氏の顔写真入りの大きな記事なので要約する。
大沢在昌、宮部みゆき、京極夏彦。当代きっての売れっ子作家3人が自ら費用を負担した異例の出版フェア「大極宮」が全国300書店で9/25から実施。出版社の枠を越えて本の魅力を伝える試みは、袋小路の出版界に刺戟を与えるだろうか?広告を含めた総費用は1千万円で8割を大沢オフィースが負担。角川書店、幻冬社、講談社、光文社、中央公論新社のライバル出版社が手を組んだのは費用の面でうま味が在っただけでなく、「三強トリオ」と評される3人の商品力があったから。出版社は「フェアで彼らの平積みが増えるのは大歓迎」と口をそろえる一方「3人の文庫本が出版社別の棚からはずれ、別の場所で著者ごとに並ぶとしたら、賛成ばかりも出来ない。」と話す。書店の文庫の棚を出版社としておさえられるかどうかは、その社の販売力を左右するだけに譲れない一線だといえる。しかしこうした出版社中心の思想をこそ変えていくべきだと京極さんは考える。フェアが成功すれば、実験を重ね、ほかの作家や出版社にノウハウを公開していくという。最強トリオの実験は、硬直化した出版界をゆさぶる試みでもある、と。
セット内容やセット数、全金額、実売金額冊数の記述はない。「ゆさぶる試み」としても「揺さぶり幅」があまりにも小さいと、池面に小石を落とした時の麻紋のように間もなく元の静かな水面に戻りかねない。水面下にヘドロが溜まっていたとしても。
一方業界専門紙『新文化』10/3号によると、見出しは「店頭活性化へ大沢・宮部・京極氏が提案。作家3氏がフェアに協力。講談社・角川・光文社ら出版5社合同企画」とあり、費用分担の割合については記述が無い。「セット内容は新刊5点(上下巻合わせて1点)と文庫23点(同)の28点31冊。傘下書店は284店、総受注数は317セットとなった。」とある。
セット定価総額が21万強だから、もし全セット売れたなら概算6000万円の売上、朝日新聞による総費用1千万が広告やポスター費用なら、返品率15〜20%が採算ラインだろう。著者が販売フェアを企画し費用をだすことは近年画期的だ。三人の著作フェアならあるいは実売率80%以上も可能かもしれないが(セットは買切りだったりして)87億4千万円売上の『ハリポタ4』は別格としても、商売として長続きするだろうか。9月に三氏の新刊を出す5出版社は大沢オフィースの費用協力が魅力としても、今回の結果いかんにかかわらず今後とも出版社も書店も歩調を合わせるべきである。
もともと販売は書店の仕事である。商品が調達でき書店のやる気があれば、書店サイドでも同様のフェアーは可能だろう。さらに3氏の協力を得て鼎談サイン会やミステリーイベント全国ツアーを組みあわせると協力になろう。確かに著者が販売企画を主動し書店店頭の活性化を働き掛ける試みは珍しく、出版不況打開策として意義あるが、業界の硬直性に揺さぶりをかけうるだろうか。せっかくの3氏の試みに出版社も取次も書店もできるかぎりの協調体制をとらねばムダに成りかねない。とりわけ書店がもっと全面にでて活動する必要があろう。
このように一種類の新聞報道だけでは「判断のための情報」や「使える情報」にはならない。マスコミは各々の立場で「中立」「客観的」な「事実」として報じるが各社の諸事情というメガネを一度は通った「事実」を報じているから、比較しながら自分なりに読み解かねばならない。それゆえ「メディア・リテラシー」解説・関連本が求められ、売行きも上向いているのだろう。
<他の、ちょっと気になった最近の朝日新聞記事>
9/25>柳美里さん出版差し止め。「石に泳ぐ魚」訴訟。
9/29>「NewType USA」創刊。
10/3>ハリーポッター4初版部数が最高に。
10/4>猥褻漫画公刊誌初の摘発
10/6>国立国会図書館関西館開館
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