今月のコラム
  「本の学校・シンポジウム in 東京・読書・街・書店」に期待する 
  株式会社 保育社  
今井悠紀

     初秋の大山で本の学校が主催する「大山緑陰シンポジウム」が始まったのは今から5年前のこと、
   あのいまわしい“阪神・淡路大震災”が発生し、阪神間の多くの書店が被災した年であった。

    第1回シンポジウムには書店、取次、出版社はもとより図書館、製本・印刷関係者、
   そして読書推進運動を展開する人々、多くの読者が参集した。
   その中で私にとって印象に残るのは、出版物の流通問題に関する議論が読者と業界人の間でたたかわされたことであった。
   他業界の物流が革命的というほどに改革され、多くの物品が翌日には配達されている時代に、
   なぜ出版物は2週間も3週間もかかるのかという読者の率直な疑問にわれわれは適確な答を示すことができなかった。
   この問題は結局第5回シンポジウムまで引き継がれ、議論が繰り返されてきた。

    出版物の流通に時間のかかる要因の一つに流通コストを誰がどのように負担するのかということが問題として存在する。
   かつては地方定価・地方正味などの制度によって、地方読者が負担する時代もあったが、
   読者の反撥もあってこれらの制度は廃された。
   ところが、流通業界の革命的ともいえるシステムの改善が読者のニーズにも変化をもたらしている。
   読みたい本はすぐに入手したいという欲求が応分の負担もいとわないというように変わってきたように思われる。
   一方で、出版業界にもそれに応えようとする動きが強まってきており、一部で実行されている。
   注文品を速やかに読者の手元に届けることが、店頭在庫の適正化をもたらし、
   ひいては懸案の返品問題解決のいとぐちになるのではないだろうか。

    今回の「本の学校・シンポジウムin東京・読書・街・書店」がその解決に向けて、
   読者のニーズに応えうる流通システムの構築に向けてその第一歩を踏み出すことができることを期待したい。