第12回 出版業界人研修 基本教育講座
6月6日(火)
出版業界の現状/田辺 聰(たなべ あきら) 日本書店大学学長

 書店は太陽である。
  書店は魂が行き交う橋である。
   書店は本が主役の劇場である。

 巨大書店の売り場は広いし清潔で綺麗、でも本に関してスタッフに聞いても何もわからない、結局疲れて帰ってきただけ、「これでは倉庫ネ」と、ベテランの読者は、書店を見抜いている。これでは書店も滅びかねない。

 書店人の本質は商売人である。同時に、同じ商売なら本を売りたい、といった文化人的な人でもある。商人と文化人の両面をうまくバランスをとれる人が、優れた書店人である。

 21世紀に生きる書店人には、覚悟がいる。電子化の進化に従ってコンテンツはいっしょだが冊子体と異なった形で伝わっていくようになった。これからも形態は様変わりしていくだろうが、それでも文化を伝播させるという覚悟がいる。

いま書店界で何が起こっているか。書店人は何をすべきか?

 売上はダウンしている。「ハリー・ポッター」のようなファンタジー系や「ダ・ビンチ・コード」知的好奇心系は健闘している。

一方で、子供読書年(2000年)、子供の読書推進法(2001年)、文字・活字文化振興法(2006年)が成立施行された。

教養新書系は好調で、忙しい現代の若い読者の新知識吸収のユニットが「新書」という単位になっている。取次界では日販の社長が若返りMPDという新取次会社も設立された。

利益率も主婦の友社が書店5%還元を試行しており、返品減少が期待されている。これらの動きの次には責任販売制が問題になる。再販制度=定価販売は本の普及に大きく貢献してきたが、ポイントカードに続く値引き、再販制度の実質的な崩壊の可能性も。

第3回本屋大賞はリリー・フランキー『東京タワー』に決定、130万部売れた。この大賞も出版社主導だが、書店独自のPOPや、自店の大賞とか、書店組合の大賞とか、作ってもよい。書店は無口すぎた。どんどん発言すべし、本屋大賞も出版社ではなく本屋主導でやれれば…。

 電子出版もその行方が注目されてもいる。
 このような変化の中で、次世代の店舗を構想するのは若い書店人の肩にかかっている。

(1)出版界不振の原因は、景気の影響を受けた、企画の貧困、町の本屋さんが消滅し配達による雑誌などの販売ルートが消滅している。CVSの強力化が書店マーケットを食う、返品率の上昇が書店経営も圧迫、リーダーの不在、など。

(2)今年の新しい潮流は、責任販売制、書店収益の確保・マージン改正の機運、書店人の実力強化。7月の「2006本の学校・出版シンポジュウムin東京」<拓け、読者・街・書店の明日>では、書店にとっての責任販売制とは何か、に関して、取次も交えて、議論される。

(3)有能なスタッフになるには;理想の書店スタッフ像をイメージする、トップや店長は自分に何を求めているかを知る、自身の人脈を広げる、トップに信頼される人物になる努力、など。

これらによって、専門職としての書店人になろう。


*講師プロフィール*

1930年大阪生まれ。大阪大学法学部卒。(株)田辺企画社長。旭屋書店・旭屋出版で洋書、企画部門から経営担当を経て(株)田辺企画設立。書店新風会会報編集室、出版流通評論、エッセイ、編集企画業務を手がける。著書に「本の森神話学」など。書店新風会顧問、JPIC読書アドバイザー専任講師、書店大学学長。日本出版学会・日本文芸家協会会員。

買う気にさせる、魅力的な売場演出/高橋小織(たかはし さおり) 髟カ館

POPを付けてみよう

店内装飾には本の積み方や並べ方などいろいろありますが、その中のPOPについて学ぼうとおもいます。
 書籍のPOPは、読んで自分がどう思ったかを書かねばなりませんが、雑誌のPOPは見て書くことができます。お客様が何を考え、何を思っているかを考えながらPOPを描いてつけてみます。

1、雑誌 手描きPOPの効力。
 ・導入に当たっての注意点;上手く描うと思うよりも、“分かりやすく”を心がける。
 ・売上UPに結びつけるために
・発売1週間後の売行き;発売日前後は広告も多く、買うお客様も名指しで買われるのでPOPの効果はあまりなく、しばらくしてどれを買おうかと迷っているお客様の購買に効果を発揮する。

2、お客様の心理的要素。
 ・迷うお客様の背中を押す。
 ・衝動買いに効果あり。
 ・手描きPOPの信頼度;書いた人が店に居て読んで手をかけて書いたから。

3、POPを描くポイント
 ・雑誌に合った用紙やペンの選び方;試行錯誤の末、紙型やペンなどは実習で使用。
 ・身易く、短時間で仕上げるコツ;表紙の言葉は書かないで表紙にない情報を伝える、ページの中・記事の中の言葉を借り、掲載ページ数も書きます。表紙のロゴや色を使いイメージを合わせる、短文中心で視覚で勝負。
 ・フェアー商品には、イラスト、切り文字等でインパクトをつける。

 どうせ捨てるものならば、工夫し活用する知恵で、経費をかけず、気持ちを込めて手間をかけること。客様はPOPを、結構楽しんで読んでおられるようです。書籍のPOPを見て買われたお客様が「面白かった」体験をもたれると、またその書店のそのPOPを信頼して買ってくださる。お店とお客様との間に、無言のコミニュケーションが生まれる。

その後雑誌のPOP作成を実作、随時質疑応答。
後、実作POPを見ながら、POPの役割や、絵や文字書体、色、囲み、などについて検討された。(目を引く・インパクトが重要、連載コミックの内容のキャッチフレーズ、立てる金具のあたる部分は空けておく、など)


*講師プロフィール*

東京生まれ。産能短期大学卒業。OLを経て1990年(株)隆文堂専務取締役、2000年代表取締役就任。書店経営をする両親のもと、幼い頃から店頭に立つ筋金入りの商人。お客様の心をつかむ売り場作りを目指して、POPや店内装飾などに工夫を凝らしている。



売れるコミックは店頭が作る/柳本重民(やなぎもと じげたみ)集英社

 集英社コミックスの愛読者カードの分析を通じて探ります。

・調査対象コミックスは「紳士同盟クロス 1巻」他8点、サンプル数は1000を目指す。回答者属性は、平均年齢・性別・既婚未婚、職業。

 9点単品ごとの各集計を数値とグラフで説明。特徴は高年齢化しつつあり、可処分所得が高い、若いサラリーマンOL層にどれだけ浸透していくかが今後の販売課題。

・「あなたはこのコミックスをどこで買いましたか?」には、書店で買うが90%内外だが「BLEACH」と「カウンタック」などは比較的コンビニ比率が高い。青年誌ものが高くなる傾向がある。

・「あなたはこの漫画が連載されている本誌を買っていますか?」には、毎号買っているが23.3%・時々買っているが21.9%と、半分以上は本誌を買っていない。その理由は、コミックスで一気に読みたい、他の漫画に興味がない、両方買うには高い、など。しかしコミックスは雑誌連載があってこそ、面白いものができるのであって、その点で本誌ばなれコミックスのみ買われるという傾向には、憂慮している。

・「あなたはこのコミックスをなぜかいましたか?」には、雑誌を読んで好き、この作家がすき、次いで、店頭で見てが19.1%で3位。したがって書店店頭でのPOPや販売演出がコミックスの普及販売の鍵を握ることになるといえる。

最近の特徴は、
・コミックスは雑誌的な売れ方ではなく、書籍的な売れ方になっている。したがってPOPには書籍のように、このように面白い・感動したといったものが良いのではないか。
・「NAHA」「花より男子」の例、ディアミックスされたものが好調。

 どうやれば今まで以上に売ることができるか?;アニメ化・ドラマ化・映画化のメディアミックスは勿論、書店での積極的なアピールで、入り口を増やしていくあらゆる努力が必要と考える。ケータイでの配信も入り口を増やす方法のひとつ。

質疑応答では、
1、重版待ちをなくせないか? 
2、アンケート「店頭で見て」は内容を見て買って入るのだろうか?パックしてあるのに。 
3、注文はS-BOOKで保留可できないか?(保留期間と重版数のバランスを検討中) 
4、コミックスの新刊配本が増えないか?大きい書店と小さい書店ではやはり違うのか? 
5、廉価版コミックスをコンビニ中心に流れているが書店ルートには流れているのか?また今後多く流すのか? 
6、書籍扱いのコミックを増やす予定はあるのか? 

などの質問が出た。


*講師プロフィール*

1953年静岡県生まれ。1976年集英社入社。「りぼん」「週刊セブンティーン」「SEVENTEEN」「ヤングユー」で22年間編集者として勤める。ヤングユー編集長。その後、98年コミックス販売部に。現在コミックス・コンテンツ販売部長代理。「読者のニーズを知る」「アピールして売る」「仕掛けて売る」漫画の面白さを読者に伝えることで頭がいっぱい!



子どもの本売場対策/池田紀子(イケダ ノリコ)ポプラ社

 日ごろ書店さんに営業訪問していて、お金や時間をかけずに、こんなことをされている、あの本をこんな展開を工夫されているということを中心にお話したいと思います。

 オープンやリニューアル時点でのお店のレイアウトなど工夫されていたと思いますが、お客様もほんの売れ方も変わってきているかもしれませんので、まったく素人の眼で、お子さんの視点で、棚や本の並べ方などを見直してください。児童書売場の特徴は、読者と買われる方が違うということです。レイアウトや本の詰まり具合など、ちょっと気をつけてください。

 朝読運動の高まりやブックスタートなどで児童書に対する認識も高まってきています。しかし、何を選べばよいのわからないのが現状のようです。この選書のお手伝いに配慮された売場は、一味違ってきています。

 絵本の場合。一点でもお勧めPOPをかけてください。「年齢別よみきかせ絵本ガイド116」(資料配布)のようなブックガイドやブックリストを参考にして、年齢別の売場つくりを展開して、選書のお手伝いをする。(POP用枠用紙は資料として配布、取り付け方を説明。)「自店ベスト10」やおすすめランキングのご案内は、多くの人に読まれているという安心感をお母さんの心に広がり効果があります。各社の新刊案内や本のチラシのPOP活用も有効です。

ちょっと目先の違うフェアについて。

 年間スケジュールの大きなイベント、入学やクリスマスといった大きなイベント以外のイベント、6月には虫歯予防デー、9月は防災の日・十五夜などを「季節のイメージテーマ」(資料配布)で、他のお店でやっていない切り口で、一点でも数点ででも集めてみてください。

 読み聞かせ会は、大げさに考えずに、1冊2冊読んで間に手遊びを入れるだけで「会」になります。ただ読み聞かせをするときにはポスターを事前に貼ってください。読み聞かせをしていますよ、と知ってもらうことで書店さんへの一味違うイメージを与えます。また、読み聞かせした本のコーナーはぜひ創ってください。当日参加できないお母さん方の選書の強い味方になります。

夏休み用の売場つくりには、小学生だけでなく、宿題対策コーナーだけにしないで、未就学の子供用の本も含めてください。また伝記や名作文庫は7・8月に販売データのピークを作っていますので、品切れにご注意ください。

近くに保育園や幼稚園が多いとか、お年寄りが多く来店されるとか、お店の特徴を考えあわせながら、やってみてください。(参考資料;ポプラ社通信カラーコピー集・しあわせのたね!配布)


*講師プロフィール*

神奈川県出身。1996年ポプラ社入社。大学在学中にアルバイトで横浜市内大手書店にて児童書を担当。卒業後株式会社ポプラ社入社、神奈川県促進を担当する。その後、販売企画担当者を経て、現在販売促進部課長として販売活動に取り組んでいると共に豊富な経験を基にした「児童図書コーナーの作り方」をテーマに各地で公演をするなど児童図書販売に力を注ぐ。

「商人の機微」/能勢 仁(のせ まさし)  ノセ事務所

 事前の「商人の機微」アンケート;あなたの関心、悩み?二つを選んでください」の多い項目についてお話します。

(アンケート項目は、1:利幅が少ないこと、2:安売りができない、3:資金繰りが苦しくなる、4:商品がなくなる、5:客数が増えない、6:商品が並びきれない、7:売れ行き本が入荷しない、8:人が育たない、9:多品種少量販売、多頻度仕入の宿命、10:委託に振り回されている、11:トラブルが多い、12:サービスの顕在化が難しい。)

1、客数が増えない。

 書店人は商人である、ということを忘れてはならない、という意味で「商人の機微〜書店人がみた顧客満足」を著した。

商人にとって大切なことは。客数を増やすこと、利益を出すこと。

客数が減少している現状の中で重要なことは、自店でABC分析(二八の法則;20%の商品で80%の売り上げを達成)を商品だけにではなく、お客様にも行い、上得意の固定客をしっかり掴むことが大事。ヘビー読者には盆暮れの贈り物をする場合でも普通のモノではなく、本屋らしいものを贈る工夫を、たとえばお客様の好みの出版社のPR誌やカタログをプレゼントするとか。また、Bランクのお客をAランクに上げていく努力も併せてしていくことも。そういうことをしていかないと客数を維持できない。

 読者も変質している。いわゆる近代読者(前田愛「近代読者の成立」岩波現代文庫)は古い読者で、その読者だけを相手にすると減少していく。現代読者はエンターテイメント性を加味した読書がメインになっているので、この辺を品揃えや販売に加味していかねばならない。マーケットを創る工夫も必要、ブックファースト神谷は朝7時から開店し早朝マーケットを開拓した。こういう発想も参考になる。

2、商品がなくなる。万引きが多い。

深刻な問題だ。CSインショップでは制限もあろうが、書店側としては、社員全体でアンテナを立て、レイアウトや通路幅などで万引きしにくくしたり、と工夫すること。

3、人が育たない。

書店の七意識(顧客・原価・改善・安全・集団・美・教育)のなかでも教育意識を高めること。教育を高めるには朝礼が有効。一人でも多人数でもできるOJTでもある。毎日始業前に15分を当てる事が重要。

4、安売りができない。

できないわけではない。丸B本、バーゲンブックはある。八木書店の第二出版は委託で置けるのでリスクはない。また非再販商品の時期はずれディスカウントは、段階的値引きはせず一挙にするほうが在庫はよく掃ける。米国の書店では値引率や販売期間などで、バーゲンとディスカウントをわけているのも参考になる。再販制度のある諸外国でもバーゲンやディスカウントに関していろいろチャレンジしており、われわれもチャレンジすることは必要だろう。ネットでのバーゲンは成功しているので参考に。

5、利益が少ない。

損益分岐点を常に計算し、分岐点を下げることを考える必要がある。下げるには、粗利益率を上げる方法と、経費を下げる方法がある。利益率を上げる方法は、正味の安い商品の販売に力を入れるとか、直取引のウエイトを増やすとか、粗利益の大きい本以外の商品の扱いを増やすとか。経費を下げる方法は、例えば、セロテープの切歯を向こうに置くと、手前に置くより少なく切るとか、といった日常的方法で意識付けをする。ITの導入も固定経費が高くなることを計算の上、導入しなければならないなど。こういう考え方は原価意識の教育によって実施されるので、朝礼を通じても常に伝えていくことが重要。

6、商品が並びきれない。

雑誌を鮮度管理し、発売後20日間販売に切り替え、棚を有効活用するとか。また、たとえ並びきらなくても重要な雑誌、趣味雑誌などは、顧客を逃がさないように売れ行き状態に注意し、定期改正をこまめにする。また売場を広げるだけを考えるのではなく、今のままで特化して並べることに目を向けることのほうが重要。さらにニッチマーケットに特化することを視野に入れることも必要だろう。

7、売れ行き本が入荷しない。

入荷しないなら自分で売れ行き良好書を作る気を起こすことを考えるほうが得策。具体的にはPOPを継続してかけていくのもその方法だし、店長お勧め本その理由とか、担当者のお勧め本などのレコメンドをつけたコーナーを設けるなど。また自店の顔、特徴を版元や取次に伝え続けることも必要だろう。特に取次ぎには必要。

最後に、ラジオ番組「心のリボン」でのことをご紹介します。ある小学校でのこと、運動会を終えて、校長先生が生徒たちに話している。「1等賞のブルーリボンの人、がんばりましたね、座ってください。」「二等の黄色リボンと三等の赤リボンにがんばりましょうね、座ってください。」あとには、リボンのない子供たちだけがたっていました。父兄もこれには驚き、シーンとしたとき、校長先生は続けて話し始めました。「リボンのない人たち、本当に残念でしたね。あなたたちには、私から、こころのリボン を贈ります。来年はがんばりましょうね」と、リボンをなげる動作をしました。

お店で努力しても実らないこともあるとおもいます。そんなときこそ、心のリボンをつけて、がんばって行ってほしいとおもいます。

以上以外も配布された参考資料(能勢 仁 著「書店の泣き所と対策」明日香出版社35周年記念出版)を参考に、また参考文献;能勢 仁 著「商人の機微〜書店人がみた顧客満足」中央経済社にも詳しく説明されている。


*講師プロフィール*

1933年千葉市生まれ。慶応大学卒業後高校教諭を経て、多田屋常務取締役、平安堂取締役研修部長、アスキー取締役出版営業統括部長を歴任。現在、ノセ事務所代表取締役。著者:「出版業界がわかる本」「書店経営がわかる本」(山下出版)「今・書店業を読む」(実務教育出版)「書店」(教育社)「新・書店発想法」(出版ニュース社)「書店の商品管理」「書店の社員教育」(日本書店大学)「世界の書店をたずねて」(本の学校 郁文塾)他多数。