第11回 出版業界人研修 基本教育講座
9日(木)
実用書販売ポイントと演出/鈴木健一(すずき けんいち)  トーハン企画推進部

1、実用書販売の傾向と対策

 実用書とは、生活の中で生じる問題を、解決する知識を得るために、実際に用いて役立てる本。
 実用書のマーケットの現状は、個人生活の充実・高齢化社会・情報化の急速な進展。
来店客全てが購買客で、職業や年齢、性別を問うものではない。
買われ方は比較買い・目的買いが中心、したがってライフスタイルの多様化や流行の変化に即して関連書も多様化し専門化する。
データはなかなかとりにくいのが現状。

 実用書・地図ガイドは書店売上の約1割を占め(20坪以下は6・7%〜201坪以上8.4%と規模により異なる。資料;統計表)、雑誌・コミック・文庫に継ぐ。
 発行される新刊点数は増えつづけてきたが2003年から減少に転じ04年で14,612点発行、料理・ダイエット・美容・健康書を中心に書店店頭をにぎわし、メディアで話題になった本が集中して売れる傾向が目立った。(能動的選書より売れ筋追随の傾向が強いか?)
 売れ筋商品の傾向は、基本を押さえたもの(始めての…、基本の…、やさしい・・・という書名)と、目的や素材を特化したもの(熟年・・・、子供の・・・、豆腐・・・、魚料理・・・といったもの)がある。


2、販売のためには、来店客層を把握し、客層に合ったジャンルを把握して棚を充実させることが重要
  (雑誌の売れ方を参考にしてジャンル把握をすることも有効)。

重点ポイントは流行や季節を反映するので、その対応をPOPなどでアピールする必要がある。
効率的な販売には「月別売場年間スケジュール」「MD-PLAN(月別)」「トーハン企画」(添付資料)などを参考にしつつ、死にスジ商品の排除や欠本補充がポイントになる。


3、ジャンル別管理

 ジャンル分類は婦人実用・生活実用・趣味に大別されるが、細分類は固定的に考えず、流行を考えつつ他店との差別化を念頭におき自店特有の分類を考えたい。
その大分類のレイアウトは、一般に入り口から婦人実用→生活実用→趣味とされている。
自店なりの中分類・小分類別に、流行や季節にあわせてプレート表示しアピールさせる。
 品揃えは中・小分類ごとに時々の流行や季節、あるいはそれらに左右されないかどうかなど、充分観察しつつ、「オーダー・ベスト・リスト」(添付資料)などを使い発注しそろえておく。
 これらの中・小分類のいくつかを組み合わせてフェアをすることも重要である。
フェアの効用は4つある、店頭に変化と活気をうむ、他店との差別化や時点の独自性のアピールから売上の増加が期待できる、顧客の求めていることが分かる、担当者の販売技術や知識のレベルアップにつながる、など考えられる。
またフェアの展開後の販売データから自店の定番商品が発見できるので、見逃さないようにデータ分析するのが大切。
ただフェア商品の発注は、返品の増加を生むことも多々あるので、期間をにらんで売り切ること。
フェアのテーマ着眼点は、季節性、話題性、社会性、地域性、提案性と5つある。
また過去の成功したフェアを発展させたテーマで企画するのも有効。

  参考文献『実用書販売のポイント』トーハン

*講師プロフィール*
1981年潟gーハンへ入社。書籍物流部門、書店営業書籍部書籍仕入を経緯し現在に至る。実用書ジャンルの趣味・生活・ゲーム攻略本及び常備・OBを促進提案実施中。


文庫・新書の管理・売場対策/大西浩平(おおにし こうへい)  トーハン企画推進部

 一般文庫のマーケットは10年あまり右肩下がりで、04年推定販売部数が2%増加という現状。この状況下では、基本が重要になる。

●平台
 1 平台は新刊置き場ではありません。
 少なくなったから外し多い新刊に変えるといった「トコロテン陳列」は厳禁です。
なにを外すかを充分見極めます。 (入荷日と入荷数の記録と現在の在庫を比較し在庫調整するなど)

 2 読者と本の出会いを高めることが増売につながります。
 読者は知っている作家ぐらいしか注目しない(注目率20%以下)。
読者に意識させる前にまず知ってもらう、知り→意識し→買うという流れに注目したい。
POPをつけると注目率は広がる(40%以下)、当店売上ベスト掲示で注目率70%以下に、フェアを行いまとめ買いをねらう(注目率100%)。
POPの作り方は、細かい説明は本の裏表紙にまかせ、キャッチコピーや色使いに重点を置いて作ること(資料;カラーコピー)。

●棚
 1 棚効率は効率化
 全ての販売の基本は、売れ筋を在庫し、死に筋を減らすこと、一冊でも多く在庫しようと考えず、棚売上は55%が既刊本・年間4万店稼動中ベスト4000位で売上の70%を占めるなどの現状を知り、商品を選定する。(資料;順位別累計販売シェア表)

 2 選定
 選定は「資料;規模別シリーズ在庫点数表」や出版社注文一覧表のランクなどを参考にする。

 3 棚にスペースを作り、有効活用する。
 現在の在庫の効率を見て減らし、棚スペースを空ける。空いたスペースを使って、品切れ防止する複数展示、棚面陳を増やす。
文庫の表紙はバラエティーに富み訴求力も高いので効果的。

●売場管理オペレーションについて
 平台でも棚でも、新刊による押し出しの循環にならぬよう注意すること。
そのための具体的方法として、スリップに入荷日と入荷数を記入し(平台用の記入と棚用の記入)定期間で在庫数と比較する、といった作業(ボウズに印管理)を売場管理オペレーションとして行い続けることが効率化につながる。

●夏の文庫フェアについて
 角川・集英・新潮の各文庫フェアは、翌年の送品ランクにも影響し、書店にとって重要。
各社の特徴を十分理解して対応する必要がある。
昨年の販売状況は、夏休みに入った7月下旬がピークだがお盆付近でも上昇。客層は20代以下の若年層の占有が高く女性に人気。
人気アイテムが入っている。
付属POPやプレゼントのアピールなど販促材をきちんと使ったお店は前年比3%増、セット消化率も10%アップという実績も出ている。
(これらのセットの6月から8月までのオペレーションは資料12P。)

●新書の場合も、以上の文庫と管理と大差ないが、テーマ別の陳列がおすすめ。
テーマ別の選書のために日経BP社のホームページの新書マップが便利に使える。(資料:サイトの画像と出力、検索結果画面)
新書の買われ方の特徴は、タイトル買いが多い、新聞などの書評でも売れ行きは左右される、という特徴がある。
ノベルズでは一極集中型で作家が限定される傾向が強い。

 <取次・担当者さんにどしどし教えてもらいましょう。相談しましょう。>


*講師プロフィール*
1993年潟gーハンへ入社。コミックス担当を経て2001年より文庫・新書を担当。入社よりコミックス文庫・新書等のペーパーバックに携わり、統計データに基づく販売促進を実践中。


コミックの周辺及び売り場対策/神戸 功(かんべ いさお)  トーハンコミック部

 ここ数年間で売れなくなってきたが、その背景を中心に話を進め、やりようによってはまだまだ売れると積極的に手をかけていくヒントにしてほしい。
ほとんどの書店ではコミック売り場は独立しているが、売れる可能性がある他の売り場全てで売る気になる必要がある。
売れない時だからこそ手をかけるのである。
 
 コミックス市場の現状

 全体的には、コミックの発行点数は増えたが返品率は高くっている、点数が多くなると管理が難しくなる。
そこで自店のお客様の特性に合わせた、扱い点数の選別が必要になる。(実稼動点数は2万4千〜3万タイトル)
以前のようなヒット作品が小粒に、また少なくなり、中ヒット作品が増えている。
本誌自体の売上部数も落ちている。本誌から単行本化されるコミックスが多いので、本誌の不振はコミックスの認知を希薄にしてしまう。
新人作家も育っていないので、既存作家の作品の廉価版などで減少を食い止めるしかない、とはいうものの閉塞に向かう。
店頭では、目的買いが65%で、平台中心の売場作りが問題になる。
コミックだけの独立した売場(排他的売場)になっているので、店内のあらゆるジャンルの売場に陳列。
シュリンクによって中身を見ることができない不満があるので、改良の工夫を。
出版社では、本誌不振でコミックスの認知度低下に対して内容を知らせる様々な工夫を試みている。
限定版の特装版コミックスも提供している。
他、同人誌市場の拡大や新古書店の台頭・不正返品の発生、まんが喫茶・レンタルコミック店の台頭、デフレ傾向なども不振要因である。

 コミックス販売の基本=売り場の役割


 店頭は、本と人の出会いの場であり、いかに知らせるかがポイント。
売り場作りのポイントは気楽に楽しめるようつくること。
そのためには商品別読者層(資料;いろいろな角度で見るコミックス)の把握やジャンル分けなどを組み合わせ、ワクワクさせてついで買いを誘うこと。
棚作り・品揃えのコツは、商品のライフサイクルをもとにした品揃えの優先順位で行いつつも、お客様ノートなどでリクエストを聞いたりしてテーマ的に絞り込んだ品揃えも加味していく。その品揃えを、来店者にわかりやすく、さがしやすい告知や配置を心がける。
それを日常業務の中でできているか点検する(資料;チェック項目とその対応策ポイント)。

 配本を増やすには…

 売れる冊数だけをこまめに発注する(追加送品実績も次回配本に反映する)。
過剰注文による返品は極力避ける(仕入れた商品は売り切ろう・送品分析資料で無駄の確認を)。
この2点を両立継続すると配本は確実に増える。(単品管理はやはり必要。)

 新刊・平台づくりのコツ

 ボリューム感の演出、人気ものだけでなく売りたいものも置く、新刊は発売日が決まっているので計画的に売り場を作る、意味のある並べ方をする、などがコツ。
 
 平台フェアをやってみよう

 初級として、テレビ化・映画化フェアを、応用として、テーマ別や作家別にフェアを(新規顧客開拓にも効果的)。
成功のポイントは、期間限定・POPや飾り付けで徹底告知・読ませる工夫と手に取らせる工夫・無理な積み上げはしない、など。
 
 既刊本販売の重要性

 コミックスでは、既刊本の売り方が他店との差別化に有効な手段で、フェア時と同様、目立たせる陳列の理由ネタを探し告知する。
重版情報の徹底活用を(資料;既刊の売り伸ばし方法、重版出来日の確認と一覧表注文書)。
注文方法に関して必要なことは、ネット注文だけでなく、ハンディーや一覧表での注文など使い分けのルールを決めて行う。
 
 返品を減らすためには

  返品発生は次巻の配本を減らし、無駄な業務がふえ、商品管理も難しくなり、資金面でも不利になる。
減らすには、無駄な発注をしないことと、仕入れたものは売り切る努力をすることの2点。
 
 もう一冊買ってもらうための、仕掛け販売のススメ

  まず仕掛け販売をするんだと意識することが重要。
仕掛けの種類は、店頭デモ販売・本誌との並列販売・同内容同作家でフェア実施・近隣書店の同調販売実施などがある。
 
  売るためのヒントとツール

  出版社の拡材・本誌・一覧表注文書、取次の週報や新刊案内や広告・情報誌、アニメ雑誌やテレビ雑誌などは販売のヒントになる。
ツールにはシリーズ・作家の表示プレート、出版社の解説カタログなどがあり、有効活用したい。
 
 商売ではあるが、このコミックスを、この作家を売るんだという熱意を持って販売してください。

*講師プロフィール*
1991年潟gーハン入社。中部地区営業担当を経てコミック担当、コミック仕入から書店営業提案を行い、効率販売・増倍推進に携わる。


ビジネス書の傾向と売場対策/池田太郎(いけだ たろう)トーハン企画推進部

 1、ビジネス書市場の現状


 市場規模と発行状況は、発行でも販売でもきびしい状態であり、今後しばらく続くだろう。

 ビジネス書市場の傾向

 金儲け関連書は最近の厳しい経済状況を反映して好調、今後も続くだろう。
ついで、メディアへの露出が影響して、関連著者の経営哲学本が売れた。
しかし著者の話題性が先行した売れ方のため販売期間は短いので、メディアの露出性や話題の動向に注意して販売することが必要。
また、直接的なコミュニケートや会話関連の自己啓発書が好調。
他に、私生活でも生かせるハウツウものや手帳活用関連が目立った。
神田正典氏関連の企業経営関連書、また、経済予測本や現代社会問題を指摘したビジネス読み物が商品として好調だが、社会問題や法改正解説本の販売期間は短いだろう。

 主な購買客層

 大別して3つの層で、研究者や大学教授などのアカデミックレベル、メーカーの技術者や経営者などのプロフェッショナルレベル、一般のビジネスマン(商品によっては主婦や一般消費者も購買層になりうるので、販売時には注意)。

 2、ビジネス書売場の作り方

 主なビジネス書ジャンル区分
 ジャンル分けは3ステップで行ってみる(資料;13区分とキーワード)。
まずキーワード毎に分類してみる、ついで自分なりにキーワードをどんどん増やし、最後に、キーワードの商品を複数のジャンルに区分して含めてみる。
このようにキーワードごとに派生するジャンルを知り、商品知識や商品を見ることが重要。

 棚の陳列について

 ポイントは、商品の関連性に注意しお客の流れを考慮して並べること、ゴールデンラインに動きの良い商品を陳列するなど意識して陳列すること、効果的に面陳列を使い試しつつ変化させていくこと、棚の商品に連動した商品を棚前平台に並べること、自店の立地や周りの企業など市場性を踏まえた棚構成に留意すること、など。

 3、ビジネス書販売のポイント

 棚のメンテナンスについて
 棚管理は販売期間が2〜3ヶ月と短い商品とロング商品があることを熟知し、売れ筋を切らさないよう欠本チェックをこまめにする。(参考資料;ツール;ビジネス書ベストランキング「ロングセラー売行良好書ベスト」)
欠品が多く出ているジャンルがあると、他の商品も無いような印象を与えるので注意。
季節動向を踏まえて棚のメンテナンスをすることが必要(資料;「MD−PLAN8月号〜翌7月号」「年間販売主要キーワードスケジュール表」)。

 効率的な発注方法について

 出版社によって商品の配本方法が異なるため、売上スリップに基づくランク配本の有無や状況や事前注文への対応があるかどうか、常備店制度の有無とその資格、など知っておく必要がある(資料:「出版社別の配本方法と対策」)。

 フェア台の有効な活用について


 フェア台やエンド平台はお客様にアピールできる場所だから、その特性を効果的に生かすようにしたい。
ポイントは、期間の限定、旬の内容のフェアを実施、販売冊数に見合う商品の仕入れ、POPはもとよりビデオやCD付き商品を見せるなど“見せるフェア台つくり”を心がけることが重要。

*講師プロフィール*
2000年潟gーハン入社。書籍営業部(現企画推進部)に配属、理工書を3年間経験、2003年より現在のビジネス書を担当。配本及び棚・商品構成の提案、フェアーや良好書のご案内、それに伴う出版社への交渉をメイン業務として実施中。