| 第10回 出版業界人研修 基本教育講座 | |
| 5日(木) | |
| 人文書の選書と展示/大江治一郎(おおえ じいちろう) 東大出版会 | |
1.人文書とは何か 人文書とは、1968年創立の、人文書を出版している出版社が集まって「人文書」の普及活動を行なっている会で、その分類によると、哲学・思想 宗教 心理 歴史 社会 教育 批評・評論など。詳細は資料「基本図書一覧 目次」。学問、あるいは思想を背景にした書物であり、学術書・入門書・教養書・啓蒙書の総体といえる。 広く捉えれば上記の分野全てを含むが、教育指導書、学参的なもの、社会事情、新興宗教関係書、雑学事典、歴史読み物、心理読み物、などは除いて考えたい。逆に法律・経済・政治あるいは自然科学・医学などに分類されるものの中にも人文書と見なすべきものが多数ある。芸術は人文とみなしてよく、文学も評論・批評は人文書、というように、きわめて幅が広い。書店の管理上、新書・叢書・文庫は人文書ではなく独立して管理するが、その多くは人文書である。重要なことは、読者からみて何が「人文書」か?という。 2.人文書の読者は。その特徴は、 ・人間・人生・社会・歴史等への関心、知的探究心が高い、読書好き、本が好き、書物への愛着、時代の変化に敏感、時代に流されない、幅広い関心、教養・啓蒙主義・知的エリート主義、本代にお金を使うことは自然なこと、高額の本を買うことも躊躇しないといった特徴をもつ人が核。 昔と比べれば本を読まなくなったとはいえ学生・大学院生は大きい読者層。時代に遅れたくない、という層も多い、知的流行に対しては遅れたくない。ビジネス書・実用書ではあきたらない層。きわめて厚い層として高齢者・主婦など生涯学習を志向する層、カルチャースクール、教育テレビ、放送大学などの受講者などである。 書店にとっては、この層は重要で、棚の変化に敏感、書店の品揃え方針・レベルに対して関心、満足すれば人にも紹介する、不満足な書店は敬遠する、とても厳しい客。 3.書店にとっての人文書 相対的には正味の高い出版社が多く、買切出版社も含まれているが、一般的に定価が高く、売れた場合の粗利額は大きい。良質な客を集め、書店の評価を高める上で大きい役割を果してきたこと、果しうること、はまちがいない。 ただ、標準以上の在庫量を必要とすること(対在庫売却率が低い)、また売れる速度が遅く資金回転率が悪いこと、など、効率主義的立場からは予想以上に厳しい現実の中で、縮小・撤退する書店が多いことも事実である。 人文書はその幅が広く、古典的基本書がある一方で、流行り廃りも激しい分野である。したがって棚も固定的なものではありえず、切り口は多様でありうる、かといって基本の流れは厳然と存在するなど、担当者にとってはむつかしいが、やりがいのある分野である。 質の高い客は書店員の力量を高める上でとても有力な教師であるが、時間がかかる。書店経営者にお願いしたいのは、担当者に時間と、仕入・発注を含め担当者に権限と責任を与えてほしい、簡単に担当をはずさないでほしい、ここで一人前になれば他の分野では比較的短時間で適応できる。中途半端にかじるだけでは効果は小さく、売れない分野と判断してしまうので危険。 4.棚作り 店の規模・立地等の条件によって異なるが「人文書」と銘打つからには基本的枠組は崩さない。たとえば、基本枠組み:『人文書のすすめV』基本図書一覧から棚8本くらい?(哲学思想・宗教・歴史・社会・心理・教育を含む) スペースの制約がある場合はすべての分野を中途半端にカバーするよりも店の特徴を出す。歴史や心理・教育は独立の棚、その他は「人文」という枠組みも可能。 「ジャンル別お薦めメニュー」の本全部とその周辺を補えば「人文」コーナーは棚2本くらいで出来る。 担当者が売りたい本を売っていくという姿勢で諸ツールを使いつつ棚つくりしていくと、人文棚ができ、お客様とフィットすれば売れる。「客からみた視点」は重要 5.人文書を売るために。棚を取れない書店にとっては、 ミニフェアは新しい切り口、新しい読者を発見するチャンス。今まで店になかった本、どこかの棚に眠っていた本が光を浴びることはよくある。フェアの結果を棚作り、仕入にどう生かすかに関しては、書評、雑誌や新聞記事、テレビ、ベストテン情報、出版社からの情報、他店の情報、出版社連合企画、出版社の提案情報を得る。 販売1冊とか2冊という数字が重要で、コンピュータがまとめた数字では大事な本を見落としてしまう。重要なことは、客を知ること、本を知ること、常に問題意識をもつこと、アンテナをはりめぐらし、ちょっと工夫すればチャンスはころがっている。実際的には、出版社と仲よくすること、情報はころがりこんでくるし、送品の協力も得られる。 人文書出版社は新刊だけでなく自社はもちろん他社の関連書籍も含めて案内、提案や売上比較データほか細かいデータを提供する出版社が多くなっているから、新刊案内・売れ筋情報等には必ず目を通して必要なものを発注すること。 6.基本ツールには、以下のものがある。 ・人文書のすすめ 基本図書一覧(ジャンル別)人文図書目録 ・人文会ニュース、今月の一押しファックス通信、人文会ジャンル別お薦めメニュー ・人文会ホームページ 各社書店用HP ・他店を見る、大書店のほか、岩波BC・往来堂・さわや・定有堂・三月書房など ・何よりも読者に聞け、読者の質問・注文への対応の中から学ぶ。 ----------------------------- 以上 情報リテラシーの基本として「体考」=スリップ、「IT考」=POSデータ、厳密な段階での検証を経なければ、思い込む、実行するのは、極めて危険。 人文会ニュース、今月の一押しファックス通信、協力店用だが、希望すれば送る。 |
*講師プロフィール* 1945年奈良県生まれ。東京大学文学部を卒業後1969年東京出版会入社。編集部からスタートし途中宣伝部を経て編集部長、営業局長、経営企画本部長(システム担当)など経験、現在事務局長。人文会代表幹事、21世紀の出版をつくる会代表世話人をつとめる。 ![]() |
| いま、文芸書は/鈴木 藤男(すずき ふじお) 新潮社 | |
文学賞は出版社の戦略的に与えられるとも言われるが、問題は読者に益しているか、だが、読者に一番近い書店も参加して、読者からの「大賞」というものもが、本の雑誌社が音頭を取って、本屋さん大賞を創られて、本を読む楽しさがひとつ広がった。 (本賞は『半落ち』は直木賞を取れず、偏った賞だと、立ち上げられた、という事情もあったとか) 受賞作品が決まると、出版社は宣伝・販売・配本や増刷に入る。直木賞なら10万部はいける、という読みも一説にあるが、今回は始めてでもあり、何部創ってよいのかもわからず、慎重になりすぎ、結果、連休前に品切れ、受賞時8万部、最終的に35万部となる。 日本の新刊点数は年間7万点といわれ、業界では問題視もされようが、点数としては世界的に見ても多くはない。欧州ともあまり変わらない。発行冊数は多いが。(これは欧州では私家版も流通にのり発行点数統計に入るため、出版内容では大きな差はあるが) 編集部は集まった原稿を厳選し、読者の顔を想像しつつ検討し、出版していく。だから没になる原稿も多くある。しかし、単行本で没になっても、文庫出版部の編集会議に再浮上し出版されることもある。文庫の最低刷り部数は2万だが、単行本で没になって、文庫で出版された本が、ある書店で注目され、売られ始め、結果一年間で10万部行ってしまった。出版社で厳選するのだが、書籍出版点数7万点で業界では問題視もされようが、もともと多様が良く、著者も出版も流通も多様なほうが良い、ということを意味している。 翻訳小説が最近元気が無いが、近代文学には大きな影響を与えてきた。また良い作品も出てこようが、皆さんも小説を読んだら、「面白かった、面白くなかった」から「何がどう面白かったか」を掘り下げてください、そして、皆さんで議論してください。それを何年も続けていくと、もっと本に、小説に、造詣が深くなっていく。 宗教問題などを論文では読む気もしない、読んでもヘキエキしても、同じテーマでも小説で読むと、登場人物が悩み語る姿を読むと、すんなり入ってくる。そういうものが小説ではないかと想う。(さらに発展して、本格的な薀蓄〜歴史問題では司馬遼太郎氏のような薀蓄手法のモノが、これからはやるかもしれない・・・) ------------------------------ 以上。 |
*講師プロフィール* 1943年静岡生まれ。1966年新潮社入社。入社より33年間、営業部一筋。書籍バーコードの標準化を提案、および出版VAN推進に参加。1999年宣伝部創設『広告コンテンツ制作』『予算管理』『プロモーション業務』を統括。公務として日本書籍出版協会で流通委員会のワーキングに所属。 ![]() |
| 王子製紙米子工場視察・今井印刷(株)工場視察 | |
1.あいさつ 王子製紙米子工場 本日見学して頂く当工場は、王子製紙全国17工場の中で、洋紙では4番目、板紙では5番目の規模の工場です。特長としては、古紙の再生設備はなく、すべてバージンパルプで、塗工紙が100%を占めます。1952年操業開始の若い工場ですが今年50周年を迎えます。97年にはN-1マシン、コーターを設置しました。これは塗工紙では世界一の大きさを誇っています。出版と紙の関係の将来は不透明ですが、現在は切っても切れない仲なので、出版業界に入られた方が紙の知識を持たれることは非常に有意義だと思います。ぜひ見学を通して理解を深めて頂きたいと思います。 2.米子工場の概要 @ 工場の沿革 王子製紙は、1873年に創業し、現在全国に17の工場と、営業所、研究所を持つ日本で最大の製紙会社。米子工場は52年に日本パルプ米子工場として操業開始。79年、合併により王子製紙(株)米子工場となり、97年には、N-1号抄紙機をはじめ、世界最新の技術を取り入れた設備を次々に増設、国内有数の高級塗工紙専門の近代工場に生まれ変わった。 A 原料の供給から製品の完成まで 紙の原料となる木材は主に製材の廃材、芯腐れ、虫食い材、曲がった木、間伐材など。 木材チップはアメリカ、オーストラリア、中国などから境港に輸入される。 チップの流れ=境港チップヤード→トラックダンパー→チップサイロ→パルプ工程へ 化学パルプ製造工程=木材チップ蒸解→未晒洗浄→除塵→酵素漂白→抄紙工程へ 抄紙工程(N-1マシン)=ワイヤー→プレス→ドライヤー→サイズプレス 塗工工程(N-1コーター)=コーターヘッド→スーパーカレンダー→リール 仕上げ工程=ワインダー→巻取 カッター→平版 B 海外植林事業と森林資源研究 海外の荒廃地に森林を再生する植林を行い温暖化対策に貢献すると共に、国内では育種、育林の研究を行い、森林資源の安定確保に努めている。 C 環境保全対策 酵素漂白の日本で始めての導入、独自の酵素自製設備の設置、生物膜排水処理設備の導入など環境の保全に努めている。 D グランドワーク活動 住民・行政・企業が一体となって生活環境の保全に取組む活動に力を入れており、清掃奉仕などを行っている。社員食堂から始まった割り箸リサイクル運動は今や全国に拡大し、月間20トンの割り箸が集まり、塗工紙に再生されている。 ![]() 今井印刷株式会社 印刷工場 1874年(明治17年) 米子市今井書店に活版印刷工場開設 1973年(昭和48年) ハイデルA全2色機を導入 1989年(平成 元年) ハイデル菊全4色機を導入 1991年(平成 3年) 電算写植システムコンポテックスを導入 1996年(平成 8年) MacintoshDTPシステム導入 1999年(平成11年) 今井印刷株式会社として分離独立 製品内容 出版関連印刷 60% 商業印刷 20% 事務用品 10% その他 10% 見学 プリプレスの現場→→プレスの現場 (印刷準備段階) (印刷機械稼働・製品完成) ![]() |
|