第10回 出版業界人研修 基本教育講座
4日(水)
楽しもう!児童書売場ノススメ/岩橋 淳(いわはし じゅん)  さわや書店

 こどもの本を読んでみましょう。

講談社『スモウマン』/福音館『ねぎぼうずのあさたろう その3』/理論社『動物たち』

こどもの本は無限の可能性をもっています。
・ 「オンナコドモ」ではなく:人生経験を積んだ大人を感動させるメッセージが込められた作品。「もう絵本は卒業」ではなく

ほるぷ出版『ぼくはくまのままでいたかったのに・・・』/あすなろ書房『満月をまって』

・千字万字に勝る表現:『大河ドラマ』もものかは
ほるぷ出版『おじいさんの旅』/岩波書店『ちいさいおうち』/光村教育図書『あたまにつまった石ころが』

・読みとる力、想像力の危機:せっかくの素材、生かすも殺すも読者次第
講談社『ぼくのともだちおつきさま』/偕成社『はっぴぃさん』

・今こそ、絵本を!
佼成出版社『ねぇだっこ』

・倫理道徳を説くのではなく:絵本は「教材」ではない!
学研『おまえうまそうだな』

・家族のコミュニケーションツールとして:絵本に頼るのではなく、素材として活かすこと。
徳間書店『すてきなあまやどり』
評論社『だめよ、ディビッド!』/あすなろ書房『赤ちゃんのためのことばの絵本』

・世相と業界の感覚のギャップ:「今」売らずにどうする!?

 楽しい売場づくりのために

売場・什器は、絵本なら面陳列できるように、位置は低いところから始め、最高お母さんの身長まで、のものを。

商品構成の留意点は、まずは定番を・そしてプラスアルファ、永遠の問題・どう分類する?作家別(文・画)、出版社別、テーマ別、年齢別(型に嵌めたくはないけれど)

 スタッフの問題

できるだけ専任を:連鎖・深化するニーズに対応していくとき、片手間ではできません!

強くならざるを得ない専門性、但し周囲も関心を持ち、担当者の孤立は防ぐこと

 お客様との対話


  子供を一番知っているのは?
 「プレゼント」の発想は、えらぶときから始まっている。おしつけず、おもねらず

 脱・マンネリのために

  フェアの切り口あれこれ:実例写真の回覧とプロジェクターで説明。
   作家、出版社、テーマ、・・・?
   飾り付け:布、段ボール、木、・・・?

 スタッフ

   まず、スタッフが:絵本、好きですか?
   絵本のある生活:それなりの投資、勉強を。
   次世代の育成:「一代限り」にならないために:素質としてのセンス。

 何がしたい?

「こうだったらいいのにな」
 イベントあれこれ:サイン会、読み聞かせ、紙芝居、写真展
お客さんとの交歓:外部団体とのタイアップ、出張販売、野外イベント、朗読会etc.

  地元のマスコミ、ミニコミに、情報の持込みからタイアップで話題づくり。
 本屋さんは情報ステーション:掲示板、スクラップ、そして自分自身が。
     作家さんにお手紙だそうポスト、出版社にお願い(復刊とか)。

 使えるものは、なんでも使う・・・モノ、人、組織
落とし穴にご注意!:専門的になりすぎると・・・!
こどもとおとなの「おもしろい」は違う

「成り立たせる」には?
 スタッフ:努力、団結、協力。
 経営者の理解:とにかく長い眼で。
図書館との共存。地域・家庭文庫とも。日頃の外商活動が下地。
打って出るということ:外商担当との連携、幼稚園、学校、病院、etc.

 むすび

 読者を育て、自分も育つ。
自分自身、親の立場になってみて、それまでは、どこか頭で考えていたと想う。お客さまの立場に立つには、お客さまの目線・発想に立つということで、頭だけで考えず、その人、立場になりきるように考え、本を勧め、読書のお手伝いをする日頃の仕事で、自分も成長していく。

資料:「定番」ステッカー/書評コピー/店内写真
*講師プロフィール*

1960年生まれ。21歳の春にアルバイトとして書店入り。以後、間に文具屋や出版社勤務などを挟みながら、東京・神奈川のデパート、商店街、郊外、駅構内など、さまざまな立地、さまざまな規模の書店で経験を積む。1994年より岩手県に居を定め、県下初の児童書・コミック専門店を担当、気がつけば人生の過半を書店員として過ごしていた。おおらかな社風とほどほどの放任に甘えながら、2本の新聞連載の締め切りに追われつつ「明日」を探す2児の父。

書店の空間を楽しむ時代へ/永江 朗(ながえ あきら)  フリーライター

本屋は本さえあれば良いわけじゃないよ。

0.なぜ空間の時代なのか。

 やせ細る新刊書店の機能、本を買うのは新刊書店しかなかったが、本に触れ合う場は多様化し、新刊書店は読者にとって唯一の窓口ではなくなった。なぜ人は書店に行くのか?読者の欲望の変化に書店はどう対応してきたかでみると、

1.ブームの歴史を振り返る

 郊外型書店は自動車社会へ対応し、ロードサイド、広い駐車場、長時間営業、明るさ、清潔感が特徴。

 コンビニエンスストアの登場と増殖は、手軽で・長時間買えるが雑誌の作り方も変えた。全国の読者に都市型ライフスタイルが広まった。

 複合型書店(ビデオレンタル、CDレンタル、ファンシー雑貨、酒、文具)の出現は、長時間営業で客層の変化(非書店人口の取り込み)、経営側には異なる収益の考え方を導入させた。

 専門書店は、品揃えの深度、限定されたジャンルでの網羅性・マニア度が高い。

 メガストアは法規制の変化により出現、規模と豊富感「何でもある」幻想、一度千坪を知ってしまうと500坪にはもうもどれないといった規模の麻薬的魅力を与える。配本(流通)の問題もよりシビアにしていく。

 ブックオフ(新古書店)の出現。ブックオフは「安い」という幻想、蛍光灯とスチール本棚、こだまする「いらっしゃいませ」マニュアル接客という快楽(人間関係のファストフード化)を与えた。書店にとってはあなどれない品揃えである。

 マニアショップの誕生。まんだらけ、とらのあな、アニメイトなど秋葉系。コスプレ店員はマニアに「たまんない」空間をつくった。新刊コミックは全体のごく一部。

 前後してネット書店が誕生する。基本的に書籍中心で、何でもある幻想をつくる。自宅にいながら、いつでも
重くない、雨でも平気、安い(交通費)。

 したがって、従来の書店経営法だけではもはややっていけない。

2.読者にとって新刊書店だけが本との接点ではない。書店はそれらの認識を新たにする必要がある。

    客にはブックオフも新刊書店も同じ───新刊書店=高くて、無愛想で、汚い?

    ますます増す図書館の利便性───ネット予約からCVS受け取りまで

    電子本はあなどれない───電子辞書、携帯小説、e-Bookなど。

3.空間へ。

 たとえば、セレクトショップ(ビームス、シップス、ユナイテッドアロウズなど)はデパートでもなく、書店だが古書もある、専門店でもなく、店と客が「テイスト」で結びつく。その例はヴィレッジヴァンガードで、その魔術は雑貨の中に本を位置づけ、モノと値段、音の洪水、猥雑さと空間の確信犯的演出で「遊べる本屋」の認識を作った。その空間は、余裕、くつろぎ、非日常、権威、笑い、感動…をつくる。

 ネット書店に以下のことはできない。物理的空間の演出、商品そのものの呈示、空間のデザイン、品揃えのコンセプトは本と本をつなげること、知らない本と出会い、知っている本の知らない側面を発見する。結局のところお客はいろんな意味での「おまけが欲しい」(佐野眞一)

4.客からの発想、

 書店とは、買わなくても気兼ねのいらない場所と想っているが、客の視点で書店を見る、すなわち、あなたはここで買いたいか?という客のシチュエーションを具体的に思い浮かべて、「私はこの書店で、必要な資料を探す?書評で読んだ本を探す?評判の本を探す?ひまつぶしする?ブラブラやデートに使う?

 ダメなところといいところを書き出し、どんどん変えていく。大事なことは、空間の演出できているかである。

5.書店員のセンスと動体視力(本を読まない人は書店人じゃない)

   知識と見識は棚に出る。読書は書店員の仕事。読まなければPOPも書けない。

6.利益率、利益高を上げる。

 本以外の商品で利益率をアップさせる。商品開発や交渉力と販売力は他業種、他業界の研究を。
*講師プロフィール*

1958年北海道生まれ。法政大学文学部卒。フリーライター。「書店経営」連載「うわさの個性派書店」をまとめた『消える本、残る本』(編書房)をはじめ、『インタビュー術!』(講談社現代新書)『批評の事情』(原書房)等多数。

書店の棚は本屋のキモチ/笈入 建志(おいり けんじ)  往 来 堂

1.新刊書店という場所が好き。

個人的に暇つぶしに本屋に入り心地よかった。だから本好きというより本屋好き。本屋の現体験は町の本屋だった。そのような心地よい場を維持することは意義あると想い苦しくも続けています。

2.地元の本屋という存在、役割

話題の本がある・雑誌が買える・文庫・コミックの新刊が買える・身近な実用書が買える・本の取り寄せを頼める、など考えられます。

小規模店の場合、これらを一定の水準以上に提供し続けるのもかなりの努力が必要な時代。いずれにしても「本を買うという動機づけ」がどこか他の場所でなされて、それに対応していく存在、すなわち市場適応型です。

3.本屋そのものが面白い存在へ。

店内において動機づけができる店、市場創造型の本屋を創れないか。そのための条件は、

A、いつ行っても前回と違う発見がある。来店者数や来店回数を増やすことになる。
   新刊だけの入れ替では目立たない。新刊の関連(文脈)書の群として入れ換る。
B、もう一冊買ってもらう工夫がある。
C、お客さんと話が出来る。
D、適応と創造のバランス。

4.本屋はホントに立地(だけの)商売か?

 街の中心部になければいけないか?
 品揃えの制約
 費用の制約
 高齢化社会

5.街の書店の脱皮の時代


 市場適応だけでは生き残れない。
 究極の適合は巨大化。
 本はもともと嗜好品、無くても死にゃ〜あしない。
 古本の世界をのぞいてみると。いま元気。値段がいじれる、自由な本の世界。

既存の書店業界のしきたりや商習慣にとらわれないで、自由に、様々な試行錯誤を試してください。
*講師プロフィール*

1970年生まれ。大学卒業後、東京旭屋書店に入社。池袋に配属され、人文書を担当。のち文芸書、あわせて文庫・新書も担当。6年間在籍したのち、千駄木・往来堂書店の店長に。大きな書店では経験しなかった仕事もひとつずつ覚えながら、気がつけば今年で往来堂書店に来て5年目となる。町の本屋という従来の形にも未来につながる可能性はあると信じて模索中。


パネルトーク「個性派店長と語ろう」

 ブックスキューブリックのお店紹介。

資料;永江朗「うわさの個性派書店54」『書店経営』より。福岡・天神から歩いて15分、おしゃれなけやき通りに隣接した場所で13坪の売り場面積で3年前に本屋を始めた。

初期在庫の95%は自分で選び取次さんから呆れられた経験も。小さい店のメリットを追求する(在庫が少ない、お客さんが店の本全部と出会える=お客のテーストに会えばコンパクトに纏まった本屋はありがたい、お客とのコミュニケーションがとりやすい〜挨拶プラス・アルファ〜、戦略は客単価は高く客数は少なく、配達はしない、客注対応は迅速に利益率は圧迫されるがe-honで親切に徹底的に探す、等)

 質問や意見を出してもらって、その件についてパネラーが答えます。

1、往来堂の雑誌に入っているスリップの管理方法は?

定期改正のため。(入数、発売日、品切れ日、返品数など記載)

2、直取引はあるか?その内容は?

  ディスカバー21、JIPC、などあるが、メーカーの好きなようにされないよう注意。入荷・請求書の管理か自社で、75掛が多い。

  地元発行の雑誌が10点弱を受身で扱っている。決済はその都度。「リトル・マガジン・コーナー」としてもいいかな?

  スローライフスタイル雑誌や地元タウン雑誌など毎号20冊、40冊、なかには100冊売れるものもあり、自店では一大勢力になっている。書籍ではトランスビューとかも売れる。管理はPCで自前でしている。

3、青杏文庫の成り立ちは?

  米子市内の滅びつつある商店街で、20坪強、生活提案型を目指しオープンして10ヶ月。

4、往来堂の店長交代で何か軌道修正されたか?

  実用書をセットや常備でなく在庫の見直をした。ベストセラーの販売環境がさらに厳しくなったので、共同仕入も考慮したネット21というグループに参加した。

  外から見ると、店つくりの基本は変えないでアレンジしていくことで、より広がりが増えたように見える。

  やはりバランスが重要で、売上が極端に悪いとバランスが悪いと判断し、修正していくべきだ。

  軌道修正のタイミングを見定めるのも重要ではないか?

5、コミックに対するこだわりは?

  盛岡で、何でも揃うコミック専門店を提案した。新刊は必要だが、既刊で専門性をどう演出するか?がポイントだが、都心のコミック専門店が出店してくると影響を受ける。そうなると、40、50代の好むコミック、殆どは文庫化されている作品を児童書売り場において見たり、と工夫を絶やさない。

  ゲームやコミックに長けた人材がいないので仕掛けられずにいる。

6、絵本の世界では親が自分の好んだ本を子供にも与え、30年前の本が売れるが、他のジャンルでもあるのか?

  絵本でもミステリーでも現状に合わせるように書き換えられ重版され長く売れているものもあるが、今の新刊がどれだけ残っているか、と考えると同じ割合で残り、大半は消えていくと思える。とはいうもののどれが残るかわからないから、棚つくりは続けていくのが書店の勤めでそのなかから定番(ロング)を見つけていく。又継続して作っていかない、新刊だけで止めてしまう姿勢の出版社もある。

 児童書は当初、置いてなかったが取次担当者が選んだ品揃えの棚が好評で、読み聞かせも行なっている。美術雑誌で絵本や絵本の世界を特集され注目されているので、絵本コーナーは今後広げていこうと意欲を持っている。

 話足らないところは、18時からのホールサムイン皆生での講師を囲んだ懇親会で、致しましょう。
*パネリスト*

司会
永江 朗   フリーライター

パネラー
笈入 建志  往来堂
岩橋   淳  さわや書店
大井   実  ブックスキューブリック

パネラー・プロフィール

大井 実 氏
1961年福岡県生まれ。同志社大学文学部社会学科卒。ファッション振興財団入社。イタリア在住、彫刻家、書家などの展示会プロデュースに携わる。池田屋(大阪)のディレクターとして文化催事制作。地域新聞編集、地元書店アルバイトを経て、2001年にブックスキューブリックを開業。



笈入 建志 氏(第3講座参照のこと)


岩橋  淳 氏 (第1講座参照のこと)