| 第7回 出版業界人研修 基本教育講座 | |||||||||||||||||
| 18日(金) | |||||||||||||||||
| 近代出版流通システムの現状/小田光雄 パピルス | |||||||||||||||||
| 近代出版流通の解明は大正・昭和から分析しなければならないが、変化が顕著になる1970年代から現在までを鳥瞰してみる。 70年代は出版社―取次―書店―読者で流通しており、書店は4,50坪、商店街立地、いわゆる街の本屋で取次からも出版社からも書店の状況を把握できていた。70年代半ばになるとモータリゼーションを背景にファミリーレストランや物販のロードサイド店が生まれ、書店業界でも75年の名古屋の三洋堂書店・郊外型書店をかわきりに出店が増える。 他業種は、ファミレスがセントラル・キッチン・システム、洋服は大量安価買取など、ソフトの変更を伴って店舗というハードが増えていったが、書店の場合はソフトの変革を伴わずハードだけが増えた。同時に書店の大型化や流通業界の参入(アシーネなど)やCVSの雑誌・コミックの新規扱い、さらに図書館の増大(70年代の公立図書館は800館が最近は2500館)による図書館専門販売会社(TRCのような)の誕生など書店が膨張する。76年と97年の書店の膨張を数字で見ると以下になる。
(定価の上昇を加味すると低下する) 問題は売上よりも坪数や書店在庫が大きく膨らんでいることで、取次に対する買掛金が膨張したことになる。特に大型書店の開店初期在庫が売掛残になると同時にオーバーストアー化し既存店の売上が悪化し閉店することにもなる。 出版社では何が起こっているかというと、新刊点数は75年の3万点から97年の6万5千点になるが、返品率は30%から97年には40%以上となり、書店膨張による社外在庫の増加→閉店ラッシュによる返品率増大→新刊点数増加→返品率の増加→資金繰り悪化→リストラその他→さらなる返品、取次支払いカット、そして手形払いストップ→倒産、となる。 取次では何が起こっているかというと、70年代は全国同一価格で同時発売という世界最高のシステムと自負していたが、90年代には、あい変わらぬどんぶり勘定と取引書店の半数は変わり肥大化した市場に利益率は悪化し、売掛金残も急上昇していった。 このように出版社―取次―書店の各段階でさまざまな問題が噴出し、今後、不良再建の処理問題、国際会計基準の導入準備への対応、再版制と委託制の問題など山積している。 さらにブックオフに代表される新古書店の出現は、読者や消費者に「本は安く手に入るものだ」というデフレ・マインドを植え付けてしまった。日本の本の値段が急落したことは歴史的に2回ある。1回目は明治初期で、浮世絵の海外流出でもわかるように日本文化自体を否定するように急落した。2回目は第二次大戦終戦直後で戦前の書物が大暴落した。2回とも暴落の後時代が変わったが、3回目の今回の本のデフレの後にどう時代が変わるのだろうか? |
*講師プロフィール* 1951年、静岡県生まれ。早稲田大学卒業、翻訳書の出版社パピルスの経営に携わり、文芸評論、戦後社会、郊外、出版流通に関する研究を続ける。著書「<郊外>の誕生と死」(青弓社)、「出版社と書店はいかにして消えゆくか」、「ブックオフと出版業界」(ぱる出版)、最新刊「古本屋サバイバル」(編書房)など。 ![]() |
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| 出版流通の最新動向をみる/丸島基和 新文化 | |||||||||||||||||
「新文化」は業界紙と言われているが、編集方針としては業界紙を脱皮して、専門紙と言われるような媒体にしていきたいと思っている。業界にはタブー視されること、書いてはいけないこと、時には書かないことで評価されることなどもあるが、ジャーナリズムに則って事実を報道していきたいと思っている。 本のプレゼンテーション 最近、全国トーハン会代表会でオラクルの社長の講演会があり、久し振りにドキっとする話を聞いた。いま、小売りは一般にだめだと言われているが、一体何がだめなのか。新規出店した、安くて品揃えも良い化粧品店で、半年で潰れそうになった例がある。ポイントカードによって顧客数の変化を見ると最初12000人いた顧客が、半年後には3000人に減っていた。何故リピーターが減ったのかと言うことで緊急会議を開いたが、お客が離れる原因は特にない。あえて言えば面白くないからということである。面白くなければ2回目、3回目は来ないのが今の顧客である。 1日に1個も売れるか売れないクスリに「1日一粒飲むとすごく元気になる」と言うPOPをつけたら売上が2倍になり、「疲れたお父さんのコーナー」を作って置いたら4倍になったと言う。しかし、書店では「風邪をひいているあなたが読む本」というような、購買の理由を書いてあげるPOPは、あまりない。 知人との話題での中で、日販が230億円の融資を受けるシステムについて、私はなかなか理解出来なかったのだが、「トップレフト」という雑誌にシンジケートローンの総てが書いてあるよと教えられて、初めて「トップレフト」と出会い、協調融資のことが分かった。例えば「トップレフト」のPOPに「シンジケートローンについて知りたいあなたに」などとあれば売れるだろう。 顧客が何を望んでいるかをつかみ、本をプレゼンテーションすることが大切なのである。(「商品を追って、顧客を追わず」ではダメ) 浜松町のブックストア談は、よく行く店だが、フェアの品揃えが上手く、直木賞の全てを揃えたり、直木賞の次点作品にコメントを付けて並べたりするなど、いつも何か面白いことをやっており、何となく寄ってしまうのである。 専門店とは 専門店といわれるものには、コミックス、アダルト、児童書、コンピュータなど色々あるが、専門店化とは何だろうか。神保町の芳賀書店はアダルト専門店として、客のニーズに合わせて本以外の商品もあり、深い範囲の品揃えでつい奥まで誘われる。 一方、秋葉原のLAOXの品揃えは、紀伊国屋書店のコンピュータ売り場の切り売りに過ぎない。大型書店のコーナーをそのまま他に持っていって作ったような店を専門店と言えるのかどうかである。 流通改善について 1.ネット書店 再販制度の見直しに伴って流通改善がうたわれ、確かに流通は変わってきており、特に電子に関わる流通は大幅に変わってきている。ネット書店について見ると、出版社系、取次ぎ系、書店系と多種多様であるが、流通の仕方は、宅急便(代引き)と店頭渡しの2パターンである。 最も売上高の高いのは紀伊国屋書店だが、私がいま注目しているのはイー・ショッピングブックスで、これは90%が店頭渡し(セブンイレブン)で、需要は高い。今後広告を打てば急激に伸びるものと考えている。ユーザーに棚を持たせ、10万サイトを作りたいとのことだが、細分化している読者のニーズに応じてかなり細分化しなければ客には伝わらないだろう。 電子本(紙の本ではなくコンテンツを販売)のネット書店で最大手のパピレスは、サンマーク出版の出版権を1億5千万円で委託され、いま出版各社から注目されている。 流通改革では、著者→出版社→取次→書店→読者のルートの中抜きが進み、最終的には著者から直接読者へ届くようになる。既に、スティーブンキングや、村上龍のものでは、ネットで配信された後に本が出ている。 2.正常ルートの改善 流通の改革は、マージンの獲得ということでもある。公取委は取次寡占の弊害を言い、再販制度の見直しを迫ったが、今のルートの限界を感じている業界トップの5氏(講談社 野間、小学館 相賀、トーハン 金田、日販 阿部、河出書房 若森)が、水面下で動いた結果が責任販売制度となった。新しい正味体系で検証してみようというのである。 責任販売制の骨子(小学館21世紀こども百科の例) 送 品 出版社――(57%)→取次――(65%)→書店――(100%)→読者 返 品 出版社←(20%)――取次←(30%)――書店 バックマージン 出版社――(2%)→取次 〃 出版社――――――――(5%)―――→書店 取次は送品するだけで8%入り、書店は販売すれば35%入る。このシステムでは取次ぎは出版社に返品しなくなる。実際このケースでは小学館への返品率は0であった。 出版社は100%返品されたとしても37%は保険が利くので原価をそれ以内に押さえておけば理屈の上では損をしない仕組みである。将来的にこの方向で出来れば良いということである。その外にもいくつかの試みがあるが、書店がしかけるものとして、文教堂書店の例がある。文教堂は株式上場以来、投資家への対応としてマージン率拡大が必要となった。出版社の倉庫に眠っている商品を3掛け位で買い切り、文教堂独自のバーコードを付けて優先的に売っている。今やそのウェートは1%を超えている。 その他にも、書店の団体が共同で試みたものもある。 効率の良い流通を獲得するためにチェーン展開を図るのであるが200軒を超えると逆にコスト高になるといわれている。 新古書店問題 ブックオフについては早くから注目してきたが、もとはといえば、ゴミとして出されていた本である。発注の方法などにおいてF.C法の違反ではないかと思う。一部の直営店(原宿店、町田店)などでは、新刊書店に負けないぐらいしっかりしたマーチャンダイジングが出来ているが、大多数はひどい状況である。 「21世紀コミック作家の著作権を守る会」でコミック作家たちが中心になって新古書店反対運動を展開しているが、これは、頒布権の獲得運動である。新古書店と、古書店の住みわけが明文化されていない現状では、神保町の反対で実現は難しいだろう。 いま、日通=三井物産=ブックオフ=CCC=日販=トヨタの提携という大きな動きがあり、一部で新古書の不正返品問題とからめて取りざたされているが、当事者はもっと大きくて新しい明日の商売を考えているようだ。つたや1200万人の会員、ブックオフ800万人の会員、計2000万人の会員を擁した会員ビジネスと言えよう。ここで出てくるのがポイントカードの問題である。 ポイントカード 公取委は値引きのガイドラインの中で運用基準を次のように定めている。 @ 役務の対価の減額…割引券 A 金銭の割り戻し…キャッシュバック、ポイントカード B 商品の付加…ポテト券など 公取委はポイントカードを薦めると言う自己矛盾を見せているが、日書連はやらない方針である。しかし、すでに100店が実施している。 今、書店人がやるべきこと ある人が、CVS,図書館、インターネットカフェなどがある現在、新刊書店は要らないのではないか、自分はそれら全部を備えたブックコミュニティのビルを作りたいと言ったが、私は新しい商品や流通のみにとらわれるのではなく、今、やっている書店でやるべき事をきちんとやらなければならないと思っている。実際に本を売るということ、具体的に落とし込む作業をしているところを取材してみたい。その事から始めるべきだと思う。 Q&A Q.出版崩壊がいわれているが、業界の将来は? A.業界は大丈夫だと思っている。不良債権を特損で落とした日販の決断を評価している。淘汰はあるだろう。自転車操業的に出版している出版社には危ないところがあるし、書店も去年並の数が潰れるかもしれない。神田村の一部やチェーン店数の減少もあろう。 これからは、アメリカのようにブックショップとマガジンショップに二分化していくと思われる。 |
*講師プロフィール* 1963年生まれ。東京出身。法政大学卒業後、1985年ニッパン・ポニーに入社。その後、日販商品開発部に出向し、レンタルビデオ・CDなど複合書店の出店事業に携わる。1989年新文化通信社に入社。広告部に所属し、現在、編集長を務めている。「新文化」は出版界唯一の業界専門紙として、幅広い関係者に読まれている。 ![]() |
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| 雑誌作りの現場−編集者から−/河野通和 中央公論新社 | |||||||||||||||||
編集者としてどういう企画をしたら売れるのか、あるときは絶望的になったり、とてもうまくいって希望が見えたり、そうして今日まで来た。それを話してみなさんのお役にたてたらと思う。 日経流通新聞が30周年を迎え、編集長の言葉が新聞に載った。商人道の原点は、商いは、つくり手が作ったものをどう届けるかである、とあった。私は編集現場に言っている。数字に惑わされるな、この雑誌で、何のために、何をするのかと。赤字でも続けるのは、雑誌は世の中のアンテナであり、パイロットであるからだ。 雑誌はいろいろな人たちと交流が持てる、人の出入りがある、人について情報がついてくる、それが大事だ。これが本と違う雑誌の機能である。 三年前、私は婦人公論編集長になり、雑誌のスタイルを一変した。基本的に雑誌のリニュ−アルは、売上がにぶったときに行うのである。しかし大抵失敗している。当時黒字雑誌であった婦人公論をリニュ−アルすることは、危険な海に乗り出すことだった。83年の歴史と固定読者があったが、壁に来ていると思っていた。 商人道、商人の原点を考えた。昔から続いた老舗の模様替は、伝統的なものとの比較で、ネガティブな反応となる。この雑誌の読者年齢は高くなっており、新規読者が入ってこない。入口を入りやすくしなくてはならない。読者の目線で考えなくてはならない。外食産業が手を変え品を変えして客を引くように、雑誌の中でやって見ようと思った。ポイントは、他誌とくらべた優位性をアピ−ルすること、よりグラビアが綺麗、しかし婦人公論が抜きんでている基本方針は変えない、変える以上は大胆に変える、編集スタッフに矛盾したことを言った。三号で勝利宣言を出すことが出来た。昨年末、婦人公論は新編集長に渡り第2ステ−ジに移っている。これは雑誌の宿命でもある。山本夏彦氏がいっている。「のぼって3年、のぼりつめて3年、下って3年、しめて10年」。雑誌はつねに進化していく。 本年1月、「中央公論」の編集長になった。引き継いだ基本的なものがある。少しづつ手を染めているところである。 雑誌作りに携わる様々な人たちのために、編集者が選ぶ雑誌ジャ−ナリズム賞というのがある。その選考委員をしている。作品の賞はあるが、雑誌ジャ−ナリズムを顕彰するものはない。労多く、益少ない雑誌作りに関わる人たちへ、ご苦労様と声を届ける賞である。今回は7回目であった。幅の広さを感じた。「週間アサヒ」のKSDのスク−プを載せたスタッフ、写真部門でプロ野球、松坂を撮った「フライデ−」のカメラマン、森さんを退陣に追い込むことになった「うわさの真相」編集長。 雑誌もいろいろある。雑誌作りに携わるものの優劣は、付加価値が高い情報であるかどうかで定まる。新聞は読者が見たいアングルで情報を用意するが、雑誌は全体のなかにある。こういうことで世のなかが見えてくる。そこに総合月刊誌の意味がある。 就任して編集スタッフに話をした。「中央公論」は創刊116年、社会的にも信頼性が高く長く続いた。しかし今の雑誌は部数的には最低、どうゆう人に、どんな内容を、どんな切り口で読ませたいのか、商いの仕方が非常に不徹底である。長きことは尊っとからず、失うものもないという現状である。負け犬になるな。闘う根性があるか。中央公論はどんな雑誌であるのか、みんな迷っている。自分もわからない。論壇不況といわれている。論壇地盤が沈下した。タレントはいるが論者がいなくなった。中央公論は性格をはっきりしたい。一方で論壇誌が売れ始めている。「諸君」「正論」など。 今月三つの特集をした。「普通の人が生きづらい」、「障害」と「壮絶人生」ばかりがなぜ読まれるのか、普通に生きるということを問題にした。 次は「野村証券が外資に飲み込まれる日」というのである。そして東京という街で起きている世の中の底流を、東京「文化大革命」として特集を組んだ。もう一つは小泉政権、「これは日本型市民革命なのか」である。 何かが動き始めた。雑誌は今の時代に起こっている変化を求め、推し進めていく心、世の中が動くとき中央公論の役割がある。過去その時代、この雑誌から何かを読み取ろうとしている人たちに、パイプをしっかり繋げたことがあった。賢明にどう生きるか、答が出せる雑誌でなくてはならない。今もとめられるインテリ層とはアクションを起こしていく知識人、たくましいインテリである。雑誌はそれに力を与えていくものである。 |
*講師プロフィール* 1953年岡山市生まれ。東京大学文学部ロシア語ロシア文学科卒。78年中央公論に入社、「婦人公論」編集部に配属となる。80年12月より「中央公論」編集部。同編集部次長を経て、97年7月より「婦人公論」編集長。98年3月より同誌創刊83年目にして初の本格的リニューアルを手がける。現在、雑誌販売局長兼中央公論編集長。 ![]() |
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